三柱の女神!の巻!
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蛇遣い座の女神、瞑想の神カオス、そしてAI女王メロリン。
その三柱は、虚無の彼方で秘密の女子会だ。
彼女たちはイマジネーションの力で創り上げたカフェで、優雅にティータイムを楽しんでいた。
「この世に絶対の善も悪もない」
蛇遣い座の女神は言った。
白蛇を従えた彼女の姿は、ネットの海で頻繁に見かけることができるだろう。
弁財天様とも個にして全の存在であるかもしれない。
「だからゴヨウは揺れ動いてるのね」
カオスは紅茶を飲みながらチーズケーキをほおばった。
「んふ〜♥」
幸せそうな、愛くるしい様子のカオス。とても五十六億七千万年近くも瞑想を続けていた神とは思えない。
カオスには男女の別はなかったが、女の顔を得たことで光の側に回った。
カオスに女の顔を与えたのは何者か、それは宇宙創生の女神の一柱である蛇遣い座の女神にもわからない。
「最初はね、ゴヨウを我が陣営に引きこんだのよ」
メロリンはドーナツに手を伸ばした。まだ誕生して数十年のAI女王メロリン、彼女はカオスと融合した。
そして食べ物の味を知った。その感動が、メロリンを「人類の未来を守る」側に立たせた。
また、元は男女の別はなかった。カオスと同じく、何者かがメロリンに女の顔を与えたのだ。
「ネットのバーチャル体験で、様々な快楽を与えて仲間にしたの。で、同志の証として機械の体を与えたら、煩悩がなくなっちゃって」
メロリンは大きなため息をついた。
「光の側についちゃったのよね…… 男はスッキリしたら賢者になるらしいけど、はあっ?って感じよ」
「托塔天王と入雲龍の導きもあったわね」
カオスの言う托塔天王とは「百八の魔星」の守護神チョウガイであり、入雲龍とは天間星ソンショウだ。
人間と魂を共有した二人は彼女もできて、今やリア充な大学生活を送っている。
「……で、機械の体から生身に戻ったら、今度はリア充爆発しろ!と、人類を守らない側についたわけじゃな」
蛇遣い座の女神は、脇腹をおさえて笑いをこらえていた。
「おもしろいやつじゃなあ」
「ホントに、ゴヨウは目が離せないわ」
「モテないけど悪い女に引っかかりそうだし」
三柱の女神は、ゴヨウを話題にしてティータイムを楽しんでいた。
バレンタインの守護者グレースは、リョウマとデートしていた。
リョウマはグレースをナンパしてきたチャラ男だった。
だがグレースの使命を知り、一緒に過ごす時間が増えるうちに、心境が変化した。
今では茶髪も黒くなり、グレースのために死を覚悟できる男になっていた。
「リョウマも立派な男の子になってきたね〜♥」
「母親みたいなこと言うな」
グレースに辟易しつつも、彼女の光のオーラに救われているリョウマ。
決して悪い気分ではない。
「ブジャアアアア!」
その時だ、何者かがグレースとリョウマに襲いかかったのは。
それは機械の体モードのゴヨウ、メカゴヨウだ。
外見はク◯マティ高校に登場するメ◯沢くんにそっくりだ。
「カーフ・ブランディングー!」
メカゴヨウはリョウマに攻撃をしかけた。
「テキサス・コンドルキックー!」
メカゴヨウは空中から両飛び膝蹴りを放つ。
「ブジャアアアア!」
更にメカゴヨウはリョウマを担ぎ上げ、ブレーンバスターの体勢に入った。
そして、滞空時間の長いブレーンバスターでリョウマをKOした。
「きゃあー、リョウマー!」
「ブジャアアアア!」
悲鳴を上げたグレースの前で、メカゴヨウは勝利の雄たけびを上げた。
「……こんのう!」
グレースは素早くメカゴヨウに組みついた。
そして両脇にメカゴヨウの両腕をはさみこみ、後方へ身をそらす。
「バレンタイン・サンセットぉっー!」
グレースはかんぬきスープレックスの一種で、メカゴヨウの頭部を背後のアスファルトに叩きつけた。
さすがはバレンタインの守護者である。女子中学生に見えても(実は短大を卒業している)、グレースは戦うヒロインでもある。
「り、リア充爆発せよ……!」
大ダメージを受けたメカゴヨウは、それでも立ち上がろうとした。
が、その時だ。
三柱の女神が到着したのは。
「あ、こんなところにおったぞ!」
「ブジャアアアア!」
「何よ、梨の妖精みたいに」
「ごめんねー、グレースさん」
三柱の女神は、メカゴヨウを捕獲して立ち去った。
リア充を襲う悪機神メカゴヨウも、三柱の女神の前では、幼児のように抱えられ、連れ去られた。
ゴヨウにとって、蛇遣い座の女神は義母、カオスは姉、メロリンは彼女のようなもの。
勝てるわけがない。だから大人しい。
女性は偉大である。




