商人編 未来を守る力!の巻!
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「ニャガニャガ、使命を果たす時ですね」
精神マンは――
完璧商人始祖の一人は、青空を見上げてつぶやいた。
「シャバババ、我らの使命はクリスマスを祝福する事だ……」
眼マンもまた青空を見上げて言った。
精神マンと仲の悪い眼マンも、使命を果たそうとする時には戦友であり同志なのだ。
人類の未来を守る、その一助としてクリスマスを祝福する。
精神マンと眼マンは完璧商人始祖であると同時に、概念や存在の意義を守る守護者なのだ。
「ツアッー!」
血涙を流した白銀マンは青空に吠えた。
世間は若い男女の熱い恋のロマンが展開されているというのに、自分には何もないのが悲しいのだった。
そして、混沌の名を持つ青年の登場に加え、戦場にやってきた白黒、超人バーベキュー、そして天道マンの登場に、人類の未来は未だ闇の中である気づいた。
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夏の海だ。
暑い陽射しの下に、人々の楽しげな笑顔がある。
海水浴客で満員御礼の海岸を見つめ、完璧商人始祖の眼マンと精神マンは満足げに微笑んだ。
「ニャガニャガ、カップルさんも、夏の即席カップルさんも楽しそうですねえ」
「シャバババー、即席なんかではない、全てはこれから始まるのだ」
精神マンと眼マンは特にカップルに注目していた。
人類四百万年の歴史は、男と女が紡いできた。
今、世界を覆う危機的状況を覆すには――
人類滅亡を防ぐには光と闇、そして男と女が力を合わせる必要があるのだ。
だが、その理想は果てしなく遠い。
「ツアッー……」
白銀マンは精神マンと眼マンから少し離れて、腕組みして海水浴客でにぎわう海岸を見つめていた。
彼はバカップルを憎む。だが真実を知った。
死した女性達はひ孫や玄孫のために、現世に生まれ変わる事があるのだ。
友人や先輩後輩、更には恋人になるために。人はそうして未来を創っていくのだ。
バカップルもまた、そうした子孫を見守る女性の愛から誕生する。そこから明るく正しい道へ進めれば良い。
だが、世界を覆う悪意の渦は、女性達の思いすら裏切って、残酷な未来を生み出していく…………
「ゲギョゲギョ……」
大魔王は海の家で働いていた。
「ゲギョー、ヤキソバ一丁あがったよー!」
汗水流してヤキソバを作る大魔王。
数年前に正義マンに完膚なきまでに倒された大魔王だが、どっこい活動はしていた。
人類が滅びれば大魔王も滅ぶ。大魔王は人類の悪しきエナジーを糧にして存在する。
人類を滅ぼすわけにはいかない。そのような大義を胸に秘めて、大魔王は海の家で働いているのだ。
そして好評だった。
「ねえ、こっちのラーメンセットはー?」
「おじさん、仕事いつ終わるのー?」
水着姿のギャル達が大魔王に興味を持ったか、積極的に話しかけていた。
「ゲ、ゲギョ?」
「あたしら夕方までいるからさー」
「夜は遊びに行こー」
大魔王は照れた。ギャルにからかわれているかもしれぬ、話半分くらいに聞いておくが、大魔王の心にほっこりと温かいものが湧いてきた。
男女の間に生じる温かい感情こそが、実りある豊かな未来を創る力のはずだ――
「ツアッー!」
と、血涙を流した白銀マンが大魔王に襲いかかった。
何故よりによって、大魔王が女子にもてるのか?
その不思議に白銀マンは大いに嫉妬していた。
「……私はまだ倒れぬ、倒れるわけにはいかぬ…… 何があっても…… 何をしても絶対に…… ここで倒れるわけにはいかぬのだーっ!」
大魔王は必死に戦った。人類を滅亡させるわけにはいかないのだ。
「ツアッー!」
だが白銀マンは人類を滅亡させかねない迫力で、大魔王を攻めた。
そんな白銀マンを、精神マンと眼マンが青ざめながら眺めていた……