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虚無戦線  作者: MIROKU
ラグナロク
86/99

めぐる季節!の巻!


   **


「我が生涯に一片の悔い無し!」


 チョウガイは虚無戦線の暗い空へ拳を突き上げた。何か良い事あったらしい。


「巨星墜つか……」


 ソンショウはかたわらでつぶやく。しかし、チョウガイはまだ死んだわけではない。






「もう死んでもいい……!」


 フランケン・ナースのゾフィーは上機嫌で朝食の準備をしていた。


 頭部の左右一対の電極は、ピコピコと点滅している。


「何やってんのかしらね……」


 レディ・ハロウィンのローレンは席についてモーニングティーを飲みながら、彼氏のヘイゾウとスマホでメールしていた。


 侍女のゾフィーの恋を微笑ましく思う一方で、あまりにも欲がないのが心配だ。


「……私を気にせずに、夜のデートでもしてきていいのよ?」


「お、お嬢様! そ、そんな事になったら……!」


 ゾフィーの頭部の電極が激しく点滅を開始した。


 それは時限爆弾が爆発する前兆のようにも思われた。






「あの二人がくっつくには宇宙崩壊するくらいのエネルギーが必要じゃな」


 蛇遣い座の女神は、ゴヨウに説明した。


「な、なんでです?」


 ゴヨウとしては、父にも等しいチョウガイに幸せになってほしいのだ。


 同じく父にも等しいソンショウは心配ない。彼は彼女のギテルベウスとケンカばかりしているが、だからこそ強い絆で繋がっていた。


「磁石は違う極で引きつけあう、男と女も違うからこそ引きつけあうが、あの二人は魂の性質が同一で、なおかつケタ違いに強い…… くっつけるには宇宙の定理を変えるか、どちらかの性質が変わるしかないが、性質が変われば互いに好みではなかろうな」


「はあ」


 蛇遣い座の女神の言葉がわかったような、わからないような。


 何にせよ、ソンショウとギテルベウスが男女の絆の顕現ならば、チョウガイとゾフィーは不滅の愛の顕現だ。


 それは尊いのだ。尊いだけでは人類は救われないが、尊いからこそ存在する意義がある。






「さーて、お風呂入ろっか!」


 グレースは、ジェットとブルの二体の妖精と共に入浴しようとしていた。


「ち、ちょっと待てよ! いつも一緒に入ってんのかよ!」


 グレースの運命の人リョウマは慌てた様子だ。


 ジェットとブルは妖精の姿だが、真の姿はどちらも成人男性なのだ。


「ん、そうだよ。リョウマはあとで一人で入ってね、け、結婚するまでそーいうのナシだから!」


 赤面するグレースは可愛らしい。


 グレースの胸に抱かれたジェットとブルは、リョウマを嘲笑うかのように、両目をキュピーンと輝かせていた。


(ゆ、許さねえ……!)


 リョウマは覚醒しつつあった。


 真面目な性格だったがチャラ男になり、グレースに出会って元に戻り――


 そして今は嫉妬パワーで何かに目覚めつつあった。


「姫様の背中流してあげるモン!」


「お願いねー、ジェット」


「姫は自分で体を洗うブル!」


「えー、ジェットとブルに洗ってもらいたいなー、めんどくさいし」


 浴室に入っていくグレースたち。


 残されたリョウマは燃えていた。彼の人生が変わりつつあった。






 三勇士のアローンは、リリースの寮でトイレ掃除をしていた。


 側には謎の美女リリースがいる。


「三人はどこ行ったんだよ」


「ゼルマンに行ったのよ」


 リリースは言った。彼女に仕えていた妖魔のメイド少女三人――


 ガーナ、スージー、ラーニップはパラレルワールドに向かったという。大抜擢らしい。


「ふうん……」


 アローンは寂しくなった。彼女たちのおかげで、アローンは孤独ではなかった。


「今は二人きりね……」


 リリースが含み笑いした。今は義理の娘イブも大学に行っている。


 鬼◯の刃の炭◯郎の母によく似たリリース。割烹着がよく似合う美女だが、アローンとしては一歩距離を取っている。


「だって正体不明だかんな……」


 旧約聖書にリリースとイブの正体を求めたが、よくわからない。


「んもう、奥手なんだから!」


 すねたリリースは美しく可愛らしいのだが――






「よろしくお願いしまーす♥」


 メイドのスージーがランバーに挨拶した。


 そばかすのある可愛らしい少女だ。


 スージーの側にはガーナとラーニップの姿もある。

 

 ガーナは身長百九十センチ以上の凄絶な美人だ。スージーは女子中学生風だが、ガーナは短大生くらいだろうか。


 ラーニップはツンと澄ました美少女だが、ランバーと目を合わせない。何か意味がある。


「あ、ああ、よろしく」


 精悍な美男子ランバーも人付き合いは苦手だ。設定年齢が引き下げられて、十八歳前後になっている。


「ぬあによ、ランバーは他の女に!」


 長い赤毛の長身美人ペネロペは、右フックでランバーを殴り飛ばした。


 ランバーはメイドカフェ「ブレーメン・サンセット」の窓を突き破って、石畳の路上まで吹っ飛んだ。


「ふん、男なんて……!」


 身長百八十センチ越えのペネロペは鼻息を荒くする。外見的には十八歳前後、ランバーと同年代だ。


 パラレルワールドのゼルマンという町で、ランバーとペネロペがどんな日々を過ごすのか? それはまた別の機会に。

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