7 男と女
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数年前の「星辰の乱れ」から始まった災禍。
世界を覆った病魔、大海からの試練、食の未来……
それらを引き起こしたのは「混沌」だが、実は「秩序」と同一だという。
その意味はわからない。人類を滅亡に導こうとする混沌、人類に進化を促す秩序。
それが同一とは、いかなる意味か?
「わしにもわからん、だがやらねばならぬ」
「そうですな、チョウガイ様」
百八の魔星の二人はーー
托塔天王チョウガイと、天間星・入雲龍ソンショウは虚無戦線の暗い空を見上げた。
著名な人物らが死を経て肉体を捨て、未来を守る戦いに加わっても、未だ勝利の兆しはない。
また、チョウガイは凱という青年と、ソンショウは翔という青年と魂を共有している。
凱にも翔にも彼女がいる、だから未来を守るために戦うのだ。
「……あいつがさ、回らない寿司を食わせろって、うるせえんだよ」
ソンショウは――
いや、翔は苦い顔をした。
「では連れていけばいいじゃないか」
「いや、兄貴も知ってるだろうけど、あいつ食うからな」
「……よし、わしも行こう。ゾフィーさんも連れて」
「頼むぜ、兄貴! 当てにしてるから!」
「貸したら返せ!」
凱と翔は実の兄弟のようなやり取りを交わした。
「全く、めんどくさい……」
女妖魔ギテルベウスも虚無戦線の空を見上げた。
ハロウィンの夜に、この世とあの世をつなげるギテルベウス。
だが彼女も変わった。翔という彼氏のために、ギテルベウスは使命を捨てた。
「はあ? あ、あたしの勝手でしょ!」
赤面しながら叫ぶギテルベウスを、マイマイとヒューイットが呆れ気味に見ている。
「はいはい、わかったから」
マイマイはハロウィンの恐怖が具現化した存在だ。
だが、女の顔を得た事で変わったようだ。彼女は知多星ゴヨウの元カノだ。
「私はケンを守るわ!」
長大なチェーンソーを振り回すヒューイット。彼女もハロウィンの恐怖が具現化した存在だが、五歳年下の彼氏ケンのために未来を守る選択をした。
「こ、混浴露天風呂かあ……」
脱衣所でグレースはドキドキしていた。
彼女が宿泊するホテルの名物は混浴露天風呂だ。
雪もちらついている。雪景色を眺めながら露天風呂に浸かるとは、最上級の娯楽だろう。
「こ、ここで出会った人と結婚しちゃうとか!」
「姫様、そんな展開は夢だモン!」
「今や恋愛は女性にとってファンタジーなのかブル?」
グレースはお供のジェットとブル――二人とも妖精形態だ――と共に、混浴露天風呂に向かった。
果たして混浴露天風呂に、そこに愛はあるんか!?
「ええーい、酒だ酒だー!」
アローンはリリースの寮の食堂で飲んだくれていた。
バレンタイン・エビルに仕える三勇士の一人が、今やリリースとイブという女性のヒモ同然とは。
それがたまらなく哀しいのだ。
「あんまり飲んじゃダメだよ」
「あー、お酒臭い」
「おつまみの追加いる?」
妖魔のメイド少女三人がアローンについていた。背景同然だった彼女達もイキイキしてきた。女性は恋をしている時が一番美しいのだ。
虚無戦線に参加する無数の人の意識と勇気と希望。
それでも未来は見えてこない。
人の悪意が世界を覆っている。
未来は希望と絶望に満ちているのだ。




