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虚無戦線  作者: MIROKU
バレンタイン・クライマックス
80/99

7 男と女


   **


 数年前の「星辰の乱れ」から始まった災禍。


 世界を覆った病魔、大海からの試練、食の未来……


 それらを引き起こしたのは「混沌」だが、実は「秩序」と同一だという。


 その意味はわからない。人類を滅亡に導こうとする混沌、人類に進化を促す秩序。


 それが同一とは、いかなる意味か?


「わしにもわからん、だがやらねばならぬ」


「そうですな、チョウガイ様」


 百八の魔星の二人はーー


 托塔天王チョウガイと、天間星・入雲龍ソンショウは虚無戦線の暗い空を見上げた。


 著名な人物らが死を経て肉体を捨て、未来を守る戦いに加わっても、未だ勝利の兆しはない。


 また、チョウガイは凱という青年と、ソンショウは翔という青年と魂を共有している。


 凱にも翔にも彼女がいる、だから未来を守るために戦うのだ。


「……あいつがさ、回らない寿司を食わせろって、うるせえんだよ」


 ソンショウは――


 いや、翔は苦い顔をした。


「では連れていけばいいじゃないか」


「いや、兄貴も知ってるだろうけど、あいつ食うからな」


「……よし、わしも行こう。ゾフィーさんも連れて」


「頼むぜ、兄貴! 当てにしてるから!」


「貸したら返せ!」


 凱と翔は実の兄弟のようなやり取りを交わした。






「全く、めんどくさい……」


 女妖魔ギテルベウスも虚無戦線の空を見上げた。


 ハロウィンの夜に、この世とあの世をつなげるギテルベウス。


 だが彼女も変わった。翔という彼氏のために、ギテルベウスは使命を捨てた。


「はあ? あ、あたしの勝手でしょ!」


 赤面しながら叫ぶギテルベウスを、マイマイとヒューイットが呆れ気味に見ている。


「はいはい、わかったから」


 マイマイはハロウィンの恐怖が具現化した存在だ。


 だが、女の顔を得た事で変わったようだ。彼女は知多星ゴヨウの元カノだ。


「私はケンを守るわ!」


 長大なチェーンソーを振り回すヒューイット。彼女もハロウィンの恐怖が具現化した存在だが、五歳年下の彼氏ケンのために未来を守る選択をした。






「こ、混浴露天風呂かあ……」


 脱衣所でグレースはドキドキしていた。


 彼女が宿泊するホテルの名物は混浴露天風呂だ。


 雪もちらついている。雪景色を眺めながら露天風呂に浸かるとは、最上級の娯楽だろう。


「こ、ここで出会った人と結婚しちゃうとか!」


「姫様、そんな展開は夢だモン!」


「今や恋愛は女性にとってファンタジーなのかブル?」


 グレースはお供のジェットとブル――二人とも妖精形態だ――と共に、混浴露天風呂に向かった。


 果たして混浴露天風呂に、そこに愛はあるんか!?






「ええーい、酒だ酒だー!」


 アローンはリリースの寮の食堂で飲んだくれていた。


 バレンタイン・エビルに仕える三勇士の一人が、今やリリースとイブという女性のヒモ同然とは。


 それがたまらなく哀しいのだ。


「あんまり飲んじゃダメだよ」


「あー、お酒臭い」


「おつまみの追加いる?」


 妖魔のメイド少女三人がアローンについていた。背景(モブ)同然だった彼女達もイキイキしてきた。女性は恋をしている時が一番美しいのだ。






 虚無戦線に参加する無数の人の意識と勇気と希望。


 それでも未来は見えてこない。


 人の悪意が世界を覆っている。


 未来は希望と絶望に満ちているのだ。

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