表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚無戦線  作者: MIROKU
混沌極まる時
8/107

守護者編 未来への戦い!の巻!


     **


 虚無の中で戦うのは「百八の魔星」である。


仏陀ブッダーの力を信じるのだ! そして使命を全うせよ」


 長ラン姿の凛々しい青年は、百八の魔星の守護神チョウガイだ。


 彼の持つ黄金の剣は、不動明王の持つ降魔の利剣に等しい。


「未来を守る!」


 導師服の青年は百八の魔星の一人、天間星「入雲竜」ソンショウだ。


 ソンショウは生前、即身仏の修行をやり遂げた。今は冥府で死した勇士を率いて混沌空間と戦っている。


 チョウガイ、ソンショウ共にかつては悪でありながら、今は人類の未来を守るために戦っているのだ。


 人の意識の及ばぬ混沌空間で……


「楽しかったですな、チョウガイ様」


 ソンショウはニヤニヤしていた。「チュパカブラ・ハンター」にて翔を演じたのは、ソンショウであった。


「まあな……」


 チョウガイは苦笑した。かつてのチョウガイでは苦笑するだけでも考えられぬ事だ。


 ゾフィーの事を思い出すだけで、チョウガイの心は優しさに満たされる。


 ソンショウもまた、騒がしくも愛しいギテルベウスを思い出すと安らぎを得る。


「また、B級ホラー風味をやりましょう、チョウガイ様。いや、剴のアニキかな」


「何を言うか、翔。……待て、ところでゴヨウは?」


「さあ」


 剴と翔は、いやチョウガイとソンショウは顔を見合わせた。


 百八の魔星の一人――


 天のはたらきを知る宿星に生まれた天機星「地多星」ゴヨウは、混沌空間の中で戦っていた。


 宇宙創生の「十二星座の女神+1」である蛇遣い座の女神から授かった「ウィンドセイバー」を駆って……


     **


 夏真っ盛りであるが、ローレンはハロウィンイベントに向けて準備を開始していた。


 ハロウィン・ナイトに現れる妖魔から人々を守ってきた「レディ・ハロウィン」。


 その末裔であるローレンは、今年も人々を守るために戦う。


 かつてハロウィンの夜には「向こうの世界」から無数の妖魔(得体の知れぬ魔物の俗称)が現れたのだ……


「いくわよ、ゾフィー!」


 魔女のコスプレをしたローレンは混沌空間に飛びこまんとする。


「Ok、お嬢様!」


 ゾフィーもローレンの傍らに控えていた。


 チュパカブラ・ハンターに登場したゾフィーと同一の存在である。


 今その姿は、土気色の肌の全身に、無数の縫合痕が刻まれたナースであった。


 レディ・ハロウィンに仕える忠実な侍女フランケン・ナース。


 それがゾフィーの正体だ。


「ふふふ…… 今年のハロウィンも盛り上がりそうね……」


 蠱惑的な笑みを浮かべる美女はギテルベウスだ。


 チュパカブラ・ハンターではコミカルな女性だったギテルベウス。


 だが、彼女は妖魔である。ギテルベウスが「死者の書」を開けば、この世とあの世が繋がり、無数の妖魔が現れるのだ。


「……」


 ギテルベウスの隣には無表情なゴム製のマスクをかぶり、ツナギを着込んだ女性マイマイがいた。マイマイの持つ肉切り包丁は鋼鉄すら切断する(原理は不明)。


 もう一人、ギテルベウスの傍らに控える女性がいた。清楚な白いワンピース姿だが、顔は不気味なマスクで隠し、奇声を上げてチェーンソーを振り回している。


 マイマイと双璧を為す「プリティフェイス」のヒューイットであった。


「何よ、ハロウィンの前に決着つける気?」


「それはいいわね、あなたの厚化粧も見飽きたわ」


「誰が厚化粧よ!」


 ギテルベウスの美しい顔が歪んだ。明るく邪悪で憎めないギテルベウスだが、今の顔は残念だ。


 ローレンとゾフィー、ギテルベウスとマイマイとヒューイットの戦いが始まろうとした時だ。


 精悍な青年二人が場に現れたのは。


「おーい、腹減ったからメシ食いに行こうぜー」


 ギテルベウスに呼びかけたのは、ソンショウであった。


「ゾフィーさんもどうですか?」


「は、はい、喜んで……」


 ゾフィーはチョウガイの差し出した手を取って、二人で歩き出した。


「全くさあ、あたしはあんたと違って忙しいのよ?」


「へへ、悪い悪い…… じゃあ俺がおごるからよ、何がいい?」


「美味しいラーメンがいいわね」


 ソンショウとギテルベウスも腕を組んで歩き出した。微笑ましいバカップルだった。


 残されたローレン、マイマイ、ヒューイットはしばらく呆然としていたが、やがて三人揃ってスマホを取り出した。


「……あ、ヘイゾウ? 私よ私。じ、時間があるなら買い物につきあってほしいんだけど?」


「……ゴヨウ? 部屋の掃除は終わった? あとは洗濯も頼むわ……」


「……みんなでコ○ケに…… うん、あたしも今から行く……」


 三人は三人揃って男に連絡した。彼らにしたところで、側にいる誰かは、自身の使命と同等以上に大事なものなのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ