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バレンタインに報われぬ思いをした者達の負のオーラ。
それが具現化したのが、このゾンビ達だ。
夜の闇に蠢くゾンビ達は、悪夢の光景そのものだ。人間の悪意の、なんという恐ろしさよ。
そしてゾンビの群れは林を抜けて、グレースの宿泊するホテルへ向かおうとする……
――ドオオオン!
夜闇を斬り裂く閃光が、ゾンビの群れの中心に注がれて、大爆発を起こした。
それはスーパーブラスター弾の一撃だ。
発射したのは鋼鉄のブルドッグだ。
「俺のハンドキャノンに弾はいくらでもあるぜ」
真の姿になったブルは、左手と一体化しているハンドキャノンの銃口を、ゾンビの群れに突きつけた。
彼はバレンタインの守護者グレースに仕える三勇士の一人だ。
ならば今ここで命を懸けるのが当然だ。
「さ、来い! 俺が相手だ!」
ブルはハンドキャノンからスーパーブラスター弾を再度、発射した。
再びゾンビの群れの中心で大爆発が生じた。
――ギャース!
爆風に吹き飛ばされるゾンビの群れ。見ていて痛快な光景だ。
どうやらブル一人で充分のようだ。流石は三勇士の一人だった。
「むにゃむにゃ、もうダメ、食べられな〜い……」
グレースはベタな寝言をほざきながら、ベッドで安らかな眠りについていた。
お供のジェットはぬいぐるみ形態で、グレースの胸に抱かれて同じく安らかな眠りについていた。
「うう、寒い……」
三勇士の一人アローンは物置で寝ていた。
彼はリリース陣営に引き込まれ、彼女達の手伝いをしている。
悪の組織を運営していたリリースだが、アローンと出会った事で変わった。
今では悪の組織は解散し、春からは名門男子高校の寮となるのだ。
リリースは寮母さんになり、男子高校生の毎日の献立を考える人になる。
「姫〜……」
布団の中でアローンは鼻をすすった。
物置には冷暖房はない。ストーブを持ちこんで寒さをしのぐが、それでもきつい。
バレンタインの守護者に仕える三勇士の一人、狼男アローン。
彼は今ではリリースに囚われた人質だ。




