7 〜クリスマスの余韻〜
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クリスマスは終わった。
ローレンとグレース、そしてゾフィーの三人娘は無事に世界を祝福した。
だがサンタクロースである白銀マンに比べたら、彼女達の祝福は三分の一程度のエネルギーだったろう。
ローレンはハロウィンの、グレースはバレンタインの守護者なのだ。
これは世界に悲しみが満ちているからに他ならない。
「はあー、終わった、終わった!」
「お姉様ったら下着まで脱ぎ散らかして…… でも、そこはかとなく漢らしい」
「さ、お二人とも私が背中流しますね〜」
疲労困憊の麗しき三美女は、浴室に入っていった……
――やるのだ、チョウガイ、ソンショウ。
――せっかく命はここまで来たのだ、簡単に終わらせてはならんぞ!
虚無の彼方で戦うチョウガイとソンショウの魂に声が届く。
それはかつて彼らが滅ぼした「恐竜人類」の王オール、そして「百鬼帝国」のグライ大帝の声ではないか。
「彼らですらが人類を……」
チョウガイは目元を拭った。
「いや、もっと大きな『命』というものを守ろうとしているのですよ」
ソンショウは虚無の彼方を見上げた。
即身仏の修行を成し遂げ、自らの力で人間を越えたソンショウ。
彼にはこの先に何があるのか、おぼろげながらわかるようだ。
その時だ、ソンショウのスマホがメール着信を告げたのは。
「あ、やべ! あいつからじゃん!」
ソンショウは慌てた。メールは彼女のギテルベウスからだった。
「あ、兄貴もゾフィーさんに連絡した方がいいぞ!」
「う、うむ!」
チョウガイも慌ててスマホを取り出し、ゾフィー宛のメールを作成した。
チョウガイは凱という青年と魂を共有し――
ソンショウは翔という青年と魂を共有している。
凱と翔は祖父同士が兄弟であり、遠い親戚になる。
そして二人には恋人がいた。
ゾフィーとギテルベウス、二人のおかげで凱も翔も迷いを遠く離れるのだ。女性は偉大である。
また凱は愛妻家に、翔は恐妻家になるさだめである。
未来が来れば、の話だが。
さて、グレースに仕える三勇士の一人アローンは未だ敵組織に囚われていた。
「何じゃ、わらわより娘の方がいいのか?」
身長十メートルを越える巨大な女帝リリースはツンツンした態度で、髪をかきあげた。
今夜は、いや今夜もリリースは美しかった。
「ママの方が好きなの? 何よ、それ! 男ならハッキリしてよ!」
リリースの娘イブはワインをラッパ飲みしながら、アローンに迫った。
彼女は人間サイズだ。今夜は珍しく化粧していた。真紅のドレスは情熱の証だ。
リリースとイブ、二人は母娘だけあって性格がそっくりだ。
二人に迫られながら、アローンは力なく笑っていた。そんな彼を妖魔のメイド少女三人が心配そうに見守っている。
(な、なんでこうなった……?)
イブに同情して飲みに誘ったのが間違いだった。
イブはアローンに惚れ、いきなり話が結婚まで飛んだ。
アローンはイブの母親にして悪の組織の首領、リリースの前に引き出された。
そんなリリースはアローンが気に入り、今では娘と彼を奪い合っているのだ。
女しかいない悪の組織、その一員である妖魔のメイド少女三人も、アローンが気に入っている……
「どっちじゃ?」
「どっちよ?」
リリースとイブ、二人の視線が恐い。
アローンは断頭台や電気イス、更には絞首台といった処刑器具を連想していた。
「美味しいごちそうが一番だ!」
三勇士の一人、ジェットはピザを食べていた。
「平和が一番だ……」
同じく三勇士の一人ブルは酒を飲みながらつぶやいた。
お わ れ




