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虚無戦線  作者: MIROKU
クリスマスまでだからね!
72/99

7 〜クリスマスの余韻〜


   **


 クリスマスは終わった。


 ローレンとグレース、そしてゾフィーの三人娘は無事に世界を祝福した。


 だがサンタクロースである白銀マンに比べたら、彼女達の祝福は三分の一程度のエネルギーだったろう。


 ローレンはハロウィンの、グレースはバレンタインの守護者ガーディアンなのだ。


 これは世界に悲しみが満ちているからに他ならない。


「はあー、終わった、終わった!」


「お姉様ったら下着まで脱ぎ散らかして…… でも、そこはかとなくおんならしい」


「さ、お二人とも私が背中流しますね〜」


 疲労困憊の麗しき三美女は、浴室に入っていった……






 ――やるのだ、チョウガイ、ソンショウ。


 ――せっかく命はここまで来たのだ、簡単に終わらせてはならんぞ!


 虚無の彼方で戦うチョウガイとソンショウの魂に声が届く。


 それはかつて彼らが滅ぼした「恐竜人類」の王オール、そして「百鬼帝国」のグライ大帝の声ではないか。


「彼らですらが人類を……」


 チョウガイは目元を拭った。


「いや、もっと大きな『命』というものを守ろうとしているのですよ」


 ソンショウは虚無の彼方を見上げた。


 即身仏の修行を成し遂げ、自らの力で人間を越えたソンショウ。


 彼にはこの先に何があるのか、おぼろげながらわかるようだ。


 その時だ、ソンショウのスマホがメール着信を告げたのは。


「あ、やべ! あいつからじゃん!」


 ソンショウは慌てた。メールは彼女のギテルベウスからだった。


「あ、兄貴もゾフィーさんに連絡した方がいいぞ!」


「う、うむ!」


 チョウガイも慌ててスマホを取り出し、ゾフィー宛のメールを作成した。


 チョウガイは凱という青年と魂を共有し――


 ソンショウは翔という青年と魂を共有している。


 凱と翔は祖父同士が兄弟であり、遠い親戚になる。


 そして二人には恋人がいた。


 ゾフィーとギテルベウス、二人のおかげで凱も翔も迷いを遠く離れるのだ。女性は偉大である。


 また凱は愛妻家に、翔は恐妻家になるさだめである。


 未来が来れば、の話だが。






 さて、グレースに仕える三勇士の一人アローンは未だ敵組織に囚われていた。


「何じゃ、わらわより娘の方がいいのか?」


 身長十メートルを越える巨大な女帝リリースはツンツンした態度で、髪をかきあげた。


 今夜は、いや今夜もリリースは美しかった。


「ママの方が好きなの? 何よ、それ! 男ならハッキリしてよ!」


 リリースの娘イブはワインをラッパ飲みしながら、アローンに迫った。


 彼女は人間サイズだ。今夜は珍しく化粧していた。真紅のドレスは情熱の証だ。


 リリースとイブ、二人は母娘だけあって性格がそっくりだ。


 二人に迫られながら、アローンは力なく笑っていた。そんな彼を妖魔のメイド少女三人が心配そうに見守っている。


(な、なんでこうなった……?)


 イブに同情して飲みに誘ったのが間違いだった。


 イブはアローンに惚れ、いきなり話が結婚まで飛んだ。


 アローンはイブの母親にして悪の組織の首領、リリースの前に引き出された。


 そんなリリースはアローンが気に入り、今では娘と彼を奪い合っているのだ。


 女しかいない悪の組織、その一員である妖魔のメイド少女三人も、アローンが気に入っている……


「どっちじゃ?」


「どっちよ?」


 リリースとイブ、二人の視線が恐い。


 アローンは断頭台や電気イス、更には絞首台といった処刑器具を連想していた。






「美味しいごちそうが一番だ!」


 三勇士の一人、ジェットはピザを食べていた。


「平和が一番だ……」


 同じく三勇士の一人ブルは酒を飲みながらつぶやいた。






 お わ れ

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