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虚無戦線  作者: MIROKU
クリスマスまでだからね!
71/99


   **


「行くわよグレース! 用意はいい?」


「私でよろしければ!」


 虚無の世界でローレンとグレースは出発準備を整えた。


 二人ともサンタクロースに扮していた。


 神秘の力を秘めたソリがある。空を駆けるトナカイもいる。


 ハロウィン・シスターズⅢの二人が、遂に聖夜に出陣だ。


 世界中の子どもを祝福するために、二人は精神世界を飛び回るのだ。


 真のサンタクロースである「完璧商人始祖」の白銀マンは、狂信者ファナティックによって動きを封じられている。


 昨年は「神の見えざる手」である正義マンが代行したが、彼もまた狂信者に封じられてしまった。


 白銀マンの兄であり「暗黒サンタ」の黄金マンも――


 協力者である痛覚マン、奈落マン、鴉マン、眼マンらも動けない。


 だから守護者ガーディアンとしてローレンとグレースが動いたのだ。


「私もいますよ〜♥」


 ナース服のゾフィーもいた。


 レディ・ハロウィンに仕える忠実なる侍女「フランケン・ナース」。


 その正体がゾフィーだ。


「ごめんね、ゾフィー…… 彼氏とデートだったのに」


「いいんですよ、お嬢様…… お嬢様だってヘイゾウさんとデートのはずじゃないですか」


 ローレンとゾフィーの侍従は顔を見合わせ苦笑した。


「はいはい、二人ともわかりましたよ〜」


 グレースはすねた。


 バレンタインの守護者である彼女は中立の存在であり、男女交際は禁止であった。


「ごめんなさいね、グレース……」


「いえいえ〜」


 すねたグレースもまた可愛らしい。


「さ、行きましょうか!」


 ローレンとグレース、そして助手のゾフィーを乗せて、神秘のソリは人類の精神世界へ旅立った。

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