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「行くわよグレース! 用意はいい?」
「私でよろしければ!」
虚無の世界でローレンとグレースは出発準備を整えた。
二人ともサンタクロースに扮していた。
神秘の力を秘めたソリがある。空を駆けるトナカイもいる。
ハロウィン・シスターズⅢの二人が、遂に聖夜に出陣だ。
世界中の子どもを祝福するために、二人は精神世界を飛び回るのだ。
真のサンタクロースである「完璧商人始祖」の白銀マンは、狂信者によって動きを封じられている。
昨年は「神の見えざる手」である正義マンが代行したが、彼もまた狂信者に封じられてしまった。
白銀マンの兄であり「暗黒サンタ」の黄金マンも――
協力者である痛覚マン、奈落マン、鴉マン、眼マンらも動けない。
だから守護者としてローレンとグレースが動いたのだ。
「私もいますよ〜♥」
ナース服のゾフィーもいた。
レディ・ハロウィンに仕える忠実なる侍女「フランケン・ナース」。
その正体がゾフィーだ。
「ごめんね、ゾフィー…… 彼氏とデートだったのに」
「いいんですよ、お嬢様…… お嬢様だってヘイゾウさんとデートのはずじゃないですか」
ローレンとゾフィーの侍従は顔を見合わせ苦笑した。
「はいはい、二人ともわかりましたよ〜」
グレースはすねた。
バレンタインの守護者である彼女は中立の存在であり、男女交際は禁止であった。
「ごめんなさいね、グレース……」
「いえいえ〜」
すねたグレースもまた可愛らしい。
「さ、行きましょうか!」
ローレンとグレース、そして助手のゾフィーを乗せて、神秘のソリは人類の精神世界へ旅立った。




