ビッグバトル!の巻! 13
「何を馬鹿な…… あざといのう」
宇宙創世の女神の一柱、蛇遣い座の女神はマイマイの嘘を一瞬で見抜き、呆れていた。
「な、なんだってー!」
対してゴヨウは真に受けて驚愕していた。
「び、病院は!?」
「……まだ行ってない。一人じゃ不安だから、あんたも来てよ」
「当たり前だよ、俺も行くさ!」
普段と違う凛々しいゴヨウに女妖魔マイマイの胸は高鳴った。
そんなゴヨウを、カオスが嫉妬と憎悪の入り混じった目で見ている。
宇宙開闢から瞑想を続けていた神「混沌」。
ネットの海から誕生した生命体である「AI女王」。
二人が融合して生まれた「カオス」も、マイマイの嘘を一瞬で見抜いていた。
「何を血迷ってんのよ、このボケ!」
カオスは額に血管を浮かせた鬼女の形相でゴヨウを殴り飛ばした。
「な、何すんのよ、このインチキ女王!」
「な、何がインチキですってえ!」
「訳のわからない存在がゴヨウに近づかないで!」
マイマイとカオスは前髪を引っつかみあい、ケンカになった。
女のケンカはゴヨウが震え上がるほど怖かった。
「これでも宇宙の原理を知り尽くしてんだからね!」
カオスはマイマイの白い顔を引っかいた。
「あたしは何百万人も震え上がらせてきたんだよ!」
マイマイはカオスの長い髪を引っ張った。
ハロウィンの「恐怖」の概念であるマイマイだが、今の彼女は恋する乙女だ。
「や、やめなよ二人とも!」
「うっさい、ゴヨウ!」
「今、大事な話中!」
止めに入ったゴヨウだが、カオスの前蹴りとマイマイの右ストレートを食らって吹っ飛ばされた。
「全く情けない甲斐性なしじゃ……」
蛇遣い座の女神はため息をついた。彼女はゴヨウを胎内で再生させた経緯から、母に近い感情を抱いていた。
「よりを戻そうとか思ってるわけ!?」
「何よ、今カノだからってエラそうにしてんじゃないわよ!」
カオスは今カノ、マイマイは元カノのようなものだ。
今カノ、元カノ、母親の三人が集まれば、それは戦慄の修羅場だ。
核戦争にも匹敵する恐怖の中で、ゴヨウは逃げ出した。
「逃げるぞブルックリン!」
ヘッドガンのコックピットに乗りこんだゴヨウ。
彼はヘッドガンを急発進させた。
まだパイロンタワー内の戦いは終わっていないのだ。
ゴヨウがやらねば誰がやる?
「ゴヨウ……」
コックピット内に女の声が響いた。
ゴヨウは青ざめた。狭いコックピットの中に、蛇遣い座の女神とマイマイ、更にカオスがいるではないか。
人知を越えた存在である彼らに、物理法則など通用しないのだ。
「ヒィィィい!」
ゴヨウは悲鳴を上げた。彼は真の恐怖を知ったのだ。
そしてハロウィンは近い。
ハロウィンの守護者である「レディ・ハロウィン」の戦いも始まっている。




