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虚無戦線  作者: MIROKU
狂気的な彼女
57/99

ビッグバトル!の巻! 11


   **


 花火の打ち上げも終わった。


 この「昭和の日本」という虚無空間にも夜の静寂が訪れた。


「さ、みんな寝ようね」


「歯は磨いたの?」


 ゾフィーとギテルベウスの女性陣は、まるで母親のごとく子ども達を寝かしつける。


 広い宴会場の畳の上に敷かれた布団で、四人の子ども達は眠りについた。


 この子ども達は「未来」の概念だ。


 チョウガイ達がこの虚無空間に導かれたのは、人類の未来を守るために他ならない。


「どうすっかな、兄貴?」


「やれる事をやるしかあるまい」


 浴衣姿のソンショウとチョウガイは、腕組みして窓から夜空を見つめる。


 この虚無空間には不安がある。恐怖がある。


 だがゾフィーとギテルベウスの愛がある。希望の光がある。


 チョウガイとソンショウは、ゾフィーとギテルベウス、更に未来を守って死ぬ事は怖くないのだ。


「んが〜……」


 ペネロペはイビキをかいていた。美人だが残念だ。


 ペネロペはランバーと二人で一枚の布団で寝ている。ランバーはペネロペに蹴り飛ばされたか、布団から体が半分飛び出していた。


「この二人は何なんだ?」


「おそらくは協力者だろう」


「協力者?」


「この虚無空間にも味方はいた……」


 チョウガイはそれを感謝する。


 協力者が現れたのは、チョウガイとソンショウに義があるからだ。


 天は自分を助くる者を助ける――


 それは宇宙の真理だ。


「な、なんだよ、俺とお前で寝るのかよ」


「へ、変な事すんじゃないわよ!」


「さ、チョウガイさんもおネムしましょうね」


「ゾフィーさん……」


 ソンショウとギテルベウスは同じ布団に、ゾフィーとチョウガイも同じ布団に入って眠りについた。


 明日は何が待つのか、それはわからない。



   **



 別の虚無空間では知多星ゴヨウとヘッドガンの戦いが続いていた。


 ゴヨウはウィスキーをヘッドガンの燃料にし、パイロンタワーの中を突き進む。


「うらやますぃー!」


 ゴヨウはコックピット内で血涙を流した。


 彼はチョウガイらの戦いを感じ取っていた。


 そしてチョウガイとソンショウ、更にはランバーの側に麗しい女性がパートナーについている事に嫉妬していたのだ。


「リア充爆発しろおおお!」


『男の嫉妬はみっともないぞ』


「うるさあああい!」


 ゴヨウは戦車形態のヘッドガンを時速六十キロで疾走させながら、レールガンやキャノン砲で次々と現れる護衛ロボットを撃破した。


 その時だ、ゴヨウは女性の声を聴いた。


「キリオー! 私と勝負しろおー!」


 ヘッドガンの前方に青いアーマー騎兵が立ちふさがった。


 それは完璧兵士イプエロンの駆るアーマー騎兵だった。

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