ビッグバトル!の巻! 10
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「昭和の日本」という異空間での戦いも続いていた。
「如意!」
ランバーが叫べば、手にした白銀の鎖「ラグナロク」は、光と共に弓矢へ変化した。
ランバーは弓で死黒天使を射る。
まるで美女のような中性的な美男ランバーは、凛々しく勇ましい。
「えーい! ええーい!」
女吸血鬼ペネロペは目から光線を発射して、夜空に浮かぶ朧な「死黒天使」を攻撃した。
吸血鬼が目からビームを出すのは、今や伝統だ。かつてはデ○オが目からビーム状のものを発射していた。
「覇王飛龍剣!」
チョウガイも手にした黄金の剣で死黒天使を攻撃した。
音速を越える光の一閃。
チョウガイの一撃は魔を降伏し、あらゆる仏敵を討ち滅ぼす。
チョウガイの隣では、ゾフィーがナース服の胸元を開いて、胸部粒子砲を発射した。
チョウガイとゾフィー、二人の超打撃を受けても死黒天使は怯んだ様子もない。
(こやつは力では倒せんのか!?)
チョウガイの顔に焦りが浮かぶ。
百八の魔星の守護神として、不動明王の眷属として多くの敵を討ち滅ぼしたチョウガイ。
だが、彼の力を以てしても死黒天使を倒せないとは。
「何やってんのよ、役立たず!」
「うるせー、お前だって役立たずだろ!」
ギテルベウスとソンショウは、この緊迫した場面で痴話喧嘩だ。
ギテルベウスは異界から様々な妖魔を召喚するが、この異空間では力を封じられていた。
ソンショウもあらゆる竜族を召喚する力を持つが、彼の力もまたこの異空間では封じられていた。
「ランバーのムッツリスケベ!」
「な、なんだと?」
「何よう、ガーナやラーニップに言い寄られて鼻の下を伸ばしちゃって!」
「そんな事はしてないぞ……」
ペネロペとランバーもまた痴話喧嘩を始めた。
子ども達は「ケンカはやめてよ!」と諫めている。
すると不思議な事が起きた。
死黒天使の姿も気配も、夜空から消え失せたのだ。
「こ、これは一体……」
チョウガイはゾフィーと顔を見合わせた。
死黒天使はソンショウらの痴話喧嘩にーー
いや、男女の紡ぐ絆にほだされて撤退したように思われた。
「わ、わからぬ…… 何もわからぬ事が恐ろしい……!」
「チョウガイさん……」
チョウガイとゾフィーは抱き合った。
彼らですらが感じた事のない不安だ。
死黒天使が求めているのは男女の絆、すなわち未来を創る力か?
「おい、アニキ〜…… こんな大事な時によ……」
「ゾフィーもイチャイチャしてんじゃないわよ!」
ソンショウとギテルベウスは、自分らの事は棚に上げて、チョウガイとゾフィーを責めた。
ランバーとペネロペは、まだ痴話喧嘩を続けている……




