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虚無戦線  作者: MIROKU
狂気的な彼女
56/99

ビッグバトル!の巻! 10


   **


 「昭和の日本」という異空間での戦いも続いていた。


如意ニョイ)!」


 ランバーが叫べば、手にした白銀の鎖「ラグナロク」は、光と共に弓矢へ変化した。


 ランバーは弓で死黒天使を射る。


 まるで美女のような中性的な美男ランバーは、凛々しく勇ましい。


「えーい! ええーい!」


 女吸血鬼ペネロペは目から光線を発射して、夜空に浮かぶおぼろ)な「死黒天使」を攻撃した。


 吸血鬼が目からビームを出すのは、今や伝統だ。かつてはデ○オが目からビーム状のものを発射していた。


「覇王飛龍剣!」


 チョウガイも手にした黄金の剣で死黒天使を攻撃した。


 音速を越える光の一閃。


 チョウガイの一撃は魔を降伏し、あらゆる仏敵を討ち滅ぼす。


 チョウガイの隣では、ゾフィーがナース服の胸元を開いて、胸部粒子砲(メガスマッシャー)を発射した。


 チョウガイとゾフィー、二人の超打撃を受けても死黒天使は怯んだ様子もない。


(こやつは力では倒せんのか!?)


 チョウガイの顔に焦りが浮かぶ。


 百八の魔星の守護神として、不動明王の眷属として多くの敵を討ち滅ぼしたチョウガイ。


 だが、彼の力を以てしても死黒天使を倒せないとは。


「何やってんのよ、役立たず!」


「うるせー、お前だって役立たずだろ!」


 ギテルベウスとソンショウは、この緊迫した場面で痴話喧嘩だ。


 ギテルベウスは異界から様々な妖魔を召喚するが、この異空間では力を封じられていた。


 ソンショウもあらゆる竜族を召喚する力を持つが、彼の力もまたこの異空間では封じられていた。


「ランバーのムッツリスケベ!」


「な、なんだと?」


「何よう、ガーナやラーニップに言い寄られて鼻の下を伸ばしちゃって!」


「そんな事はしてないぞ……」


 ペネロペとランバーもまた痴話喧嘩を始めた。


 子ども達は「ケンカはやめてよ!」と諫めている。


 すると不思議な事が起きた。


 死黒天使の姿も気配も、夜空から消え失せたのだ。


「こ、これは一体……」


 チョウガイはゾフィーと顔を見合わせた。


 死黒天使はソンショウらの痴話喧嘩にーー


 いや、男女の紡ぐ絆にほだされて撤退したように思われた。


「わ、わからぬ…… 何もわからぬ事が恐ろしい……!」


「チョウガイさん……」


 チョウガイとゾフィーは抱き合った。


 彼らですらが感じた事のない不安だ。


 死黒天使が求めているのは男女の絆、すなわち未来を創る力か?


「おい、アニキ〜…… こんな大事な時によ……」


「ゾフィーもイチャイチャしてんじゃないわよ!」


 ソンショウとギテルベウスは、自分らの事は棚に上げて、チョウガイとゾフィーを責めた。


 ランバーとペネロペは、まだ痴話喧嘩を続けている……

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