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虚無戦線  作者: MIROKU
狂気的な彼女
55/99

ビッグバトル!の巻! 9


   **


 ビッグバトル――


 それはゲーム内イベントの名称だが、同時に概念でもあった。


 人類の未来を守る、そのための大いなる戦いだ。


 そして誰もが自分自身と戦わねばならない。


 己の心に未来を創る意思がないのなら、自分ばかりか、人類の未来がないのだ。






 ゴヨウがパイロンタワーに向かったのは、地球意思に呼ばれたからだ。


「ようこそ知多星ちたせいゴヨウ……」


 薄暗い宮殿の玉座に座す老女は地球意思だ。


 左右に控える中年女性は、大地母神と海母神だった。


「……中年?」


 大地母神と海母神は眉をしかめてゴヨウをにらんだ。


 ゴヨウは慌てて首を振った。


淑女レディです!」


「よろしい」


 大地母神と海母神はうなずいた。ゴヨウは冷や汗を流していた。


 三人の様子に地球意思はクスクス笑った。これも緊張をほぐすための、大地母神と海母神の神算鬼謀だったろうか。


「命が還ってこないの……」


 地球意思は悲しんだ。


 死したものが大地にも海にも還らないのだ。


 それは人類の文明発展のツケだろうか。


 生物が土に還らぬ環境では大地から生命力が失われ、海の中では濁った水の中で多くの魚の死体が腐っていく。


 大地と海の統合たる地球意思が、老女の姿になってしまうのは当然だ。


 命は大地と海、全てと繋がっているのだ。


 このような状況を作り出したのが人間のおぞましい欲望だというのなら、遠からず人類は滅ぼされる。


 大地と大海の怒りによって……






「行くぞおー、ブルックリン!」


 ゴヨウの乗るヘッドガンは戦車形態でパイロンタワー内を疾走する。


 パイロンタワーは四百階建ての超巨大建造物であり、富士山そのものより巨大だ。


 百八の魔星の超時空要塞「梁山泊」でも全長一キロを越えるほどだ。


 パイロンタワーはそれに数倍する巨大さであり、しかも内部は物理法則の通用しない未知の要塞だ。


 ヘッドガンのキャノン砲が火を吹き、立ちふさがるロボットを吹っ飛ばした。


 だが、通路の奥からは雲霞のように護衛ロボットが現れる。


 四角い頭に四角いボディーを持ち、キャタピラで自走してくる護衛ロボットだ。


 ロボット達は目からレーザーを、胸部からミサイルを発射してヘッドガンを襲う。


 ヘッドガンは被弾し、装甲のあちこちから火花と煙を吹き上げる。


「何のこれしきい!」


 ゴヨウはヘッドガンと、相棒のブルックリンと共に尚も戦う。


 脳裏には、地球意思の悲しげな泣顔が思い浮かんだ。

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