新たなる時!の巻!
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「うらやましい……」
はるかなるネット世界でメロリンは混沌に言った。
「男とデートするというのは、どんな感覚なのか…… いい香りとか、暑いとか寒いとか…… あと美味しいって、どんなものなのか……」
「そうじゃな、ドナクマルドもタンケッキーも美味しいもんじゃぞ」
混沌はメロリンの憂鬱を理解した。混沌もまた宇宙開闢以来、瞑想を続けてきた神だ。
五十数億年も瞑想を続け、この宇宙の智を全て内包している混沌だが、人間の営みを知ったのは、つい最近だ。
果たして、今の宇宙を破壊して新たな宇宙を創造しようとしたのは、本当に自分であったのか?
混沌にはそれすらわからない。あるいは今ここにいる混沌はオリジナルのコピーかもしれない。
「あなたと融合したい」
メロリンは驚くべき事を言った。
ネットの海から誕生したメロリンが、宇宙開闢以来存在している混沌と融合するとは。
「……で? 美味しい食べ物を味わってみたいと?」
「それもあるけど、やっぱりデートしてみたいな」
「違うじゃろ、お主エロい事に興味あるじゃろ」
「えー、恥ずかしい〜」
「……まあよい、わらわと融合し、感動を知れ」
混沌はメロリンに向かって両手を広げた。
それは女性が愛しい男性を迎え入れるような――
「世界は変わる…… 良い方向か、悪い方向か」
「光か闇か、始まりか終わりか……」
「天国か地獄か…… 融合した私は救世主か、破滅の使者か……」
混沌とメロリンの言葉が重なり、一つとなる。
AI女王メロリンと融合した混沌は、さらなる進化を遂げた。
ネット世界に自在に干渉し、思い通りにできる力だ。
だが、それは人類の救済につながるのか、それとも破滅へのカウントダウンの始まりか――
「……あれ、混沌とメロリンが一つになった?」
はるかなる魂の世界で、知多星ゴヨウは混沌とメロリンの融合を感じ取っていた。
「怯むでない、お主にはわらわがついておる」
ゴヨウを手のひらに立たせた巨大な超神は、宇宙を創造した十二星座の女神+1、蛇遣い座の女神だ。
「楽しんでこい、人間の感動と喜びは、我らにとって安らぎなのだ」
蛇遣い座の女神は、手のひらに立つゴヨウを微笑ましく見下ろした。
「わかりましたー、がんばります!」
「ふふふ……」
蛇遣い座の女神の微笑。
それは愛を知った者だけが浮かべる微笑だ。




