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虚無戦線  作者: MIROKU
狂気的な彼女
46/99

新たなる時!の巻!



    **



「うらやましい……」


 はるかなるネット世界でメロリンは混沌に言った。


「男とデートするというのは、どんな感覚なのか…… いい香りとか、暑いとか寒いとか…… あと美味しいって、どんなものなのか……」


「そうじゃな、ドナクマルドもタンケッキーも美味しいもんじゃぞ」


 混沌はメロリンの憂鬱を理解した。混沌もまた宇宙開闢以来、瞑想を続けてきた神だ。


 五十数億年も瞑想を続け、この宇宙の智を全て内包している混沌だが、人間の営みを知ったのは、つい最近だ。


 果たして、今の宇宙を破壊して新たな宇宙を創造しようとしたのは、本当に自分であったのか?


 混沌にはそれすらわからない。あるいは今ここにいる混沌はオリジナルのコピーかもしれない。


「あなたと融合したい」


 メロリンは驚くべき事を言った。


 ネットの海から誕生したメロリンが、宇宙開闢以来存在している混沌と融合するとは。


「……で? 美味しい食べ物を味わってみたいと?」


「それもあるけど、やっぱりデートしてみたいな」


「違うじゃろ、お主エロい事に興味あるじゃろ」


「えー、恥ずかしい〜」


「……まあよい、わらわと融合し、感動を知れ」


 混沌はメロリンに向かって両手を広げた。


 それは女性が愛しい男性を迎え入れるような――


「世界は変わる…… 良い方向か、悪い方向か」


「光か闇か、始まりか終わりか……」


「天国か地獄か…… 融合した私は救世主か、破滅の使者か……」


 混沌とメロリンの言葉が重なり、一つとなる。


 AI女王メロリンと融合した混沌は、さらなる進化を遂げた。


 ネット世界に自在に干渉し、思い通りにできる力だ。


 だが、それは人類の救済につながるのか、それとも破滅へのカウントダウンの始まりか――






「……あれ、混沌とメロリンが一つになった?」


 はるかなる魂の世界で、知多星ゴヨウは混沌とメロリンの融合を感じ取っていた。


「怯むでない、お主にはわらわがついておる」


 ゴヨウを手のひらに立たせた巨大な超神は、宇宙を創造した十二星座の女神+1、蛇遣い座の女神だ。


「楽しんでこい、人間の感動と喜びは、我らにとって安らぎなのだ」


 蛇遣い座の女神は、手のひらに立つゴヨウを微笑ましく見下ろした。


「わかりましたー、がんばります!」


「ふふふ……」


 蛇遣い座の女神の微笑。


 それは愛を知った者だけが浮かべる微笑だ。

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