パーフェクトファイター!の巻!
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来たるべきイベント「ビッグバトル」に向けて、バーチャルゲーム「バトリング」のプレイヤーは世界中で盛り上がっていた。
体験人数は二十万人を越すとされ、ビッグバトルに参加するプレイヤーだけでも一万人を越えるらしい。
そんなバトリングで注目されるのは、謎の機甲ハンターの美少女メロリンと、パーフェクトファイターのイプエロンだ。
緑に覆われた戦場に緊張が走った。
ジャングルで敵味方に分かれて戦っていたアーマー騎兵達の前に、謎の青い機体が出現したのだ。
「イプエロンだ!」
「逃げろオー!」
敵も味方も慌てふためく中で、青いアーマー騎兵がローラーダッシュで突撃してきた。
一回り大きな機体で軽快な動き――
例えるなら大型トラックが、バイクのように軽快に走り回る様に似た。
――ドキュン!
青いアーマー騎兵の右手から発射された徹甲弾が、敵アーマー騎兵のコックピットを貫き爆発炎上させていく。
正確な射撃、たったの一発で敵アーマー騎兵を撃破していくとは。
戦場を駆け巡る青い稲妻――
イプエロンが駆るアーマー騎兵はブルーサンダーと呼ばれた。
射撃ではなく、接近しての格闘戦でもブルーサンダーは無類の強さを発揮した。
――グワシャア!
ブルーサンダーの右手は鉤爪となっている。
特殊な超硬合金製の鉤爪は、アーマー騎兵の装甲を紙のように突き破る。
イプエロンには大型の火器は必要ないのだ。
正確な射撃によって右手に仕込まれた徹甲弾一発で敵アーマー騎兵を爆発炎上させ、接近すれば鉤爪で引き裂く。
パーフェクトファイターに相応しい戦いぶりだった。
人間に例えると、短距離走選手のように速く、プロボクサーのように素早く敵に襲いかかり、プロレスラーのようなパワーで撃破する……
勝てる者などいようか。いや対等に戦う事すら難しいだろう。
イプエロンはNPCであり、出現してから五分で撤退するが、今日は五分も必要なかった。
四分未満で十数人のプレイヤーが全滅していた。
「キリオはどこだ!」
この日、イプエロンはちょっとしたパフォーマンスを披露した。
コックピットを開き、ヘルメットも外して素顔を全世界のプレイヤーの前にさらしたのだ。
それは凛々しい眼差しの美女であった。肌にぴったりしたパイロットスーツの肢体に反応する者は多かった。
「私の、私のプライドが……!」
イプエロンのつぶやきは謎だった。
「やるのお……」
混沌はゴヨウと共にゲーム画面をのぞいていた。
パーフェクトファイター、イプエロン。
その強さは本物だ。ビッグバトルが開催された時、彼女は世界中の何処に現れるのか。
「……逃げてもいいかな?」
ゴヨウはひきつった笑顔で混沌に振り返った。混沌は軽くゲンコツをゴヨウの頭に落とした。
「わらわもメロリンもゴヨウをサポートするから、がんばるのじゃ!」
「む、無理だよー!」
「ゴチャゴチャ言うな!」
混沌は再度、ゴヨウの頭にゲンコツを落とした。これも愛情表現だ。
バーチャルゲーム、バトリング。
そのビッグイベントであるビッグバトルの開催は近い。




