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虚無戦線  作者: MIROKU
狂気的な彼女
38/99

アーマー騎兵!の巻!


   **


 気が狂いそうな湿気。


 熱病。毒虫。


 闇からの銃弾……


 緑に覆われていても、ここは地獄だ。






 ゴヨウと混沌はジャングルの中にある傭兵基地にいた。


「行くぞゴヨウ!」


 ビキニ姿の混沌は、高さ四メートルほどの人型ロボット「アーマー騎兵」に飛び乗った。


 暑さ対策のために黒いビキニ姿の混沌。彼女の健康的なお色気を醸し出す肢体に浮かんだ汗が、男達を刺激し活気づける。


「出撃だ、気合入れろお前ら! くたばった奴にゃ分前はねえ!」


 傭兵団の指揮官の号令一下、人型の戦闘ロボット「アーマー騎兵」が傭兵基地から次々と出撃した。


 ジャングル戦に適応した「沼亀」というアーマー騎兵がほとんどだが、ゴヨウと混沌は「猟犬」に乗りこんでいた。


 猟犬はコストパフォーマンスが高く、様々なオプションによって沼地戦にも適応できる。


「渡河作戦だ、ゴヨウ先行しろ!」


 指揮官の嫌がらせにも等しい指揮に従い、ゴヨウの駆る緑色の猟犬は沼に侵入する。


 アーマー騎兵の左右腰に取りつけたエアパージによって浮力を得た猟犬は、ゆっくりと沼に侵入し、進んでいく。


 意外なのは混沌がゴヨウのバックアップについている事だ。混沌はピンク色の塗装を施した猟犬を駆り、ゴヨウの背後にピタリとついて周囲を索敵する。


 この状態で敵から狙い撃ちされれば、高い確率で被弾し爆発するだろう。ゴヨウも混沌も命がけだ。


 指揮官はコックピットで苦い顔をしているが、混沌のTバックの尻に悩殺されている毎日なので何も言えない。


 やがてゴヨウと混沌の猟犬が沼を渡りきった。それに続いていくつもの沼亀が沼に侵入する。


 その時だ、敵軍領地から飛来したミサイルが沼亀を吹き飛ばしたのは。


 爆風によってジャングルの緑の木々が揺れ、木の葉が吹き飛ぶ。


 場に生じた緊張の中で、敵軍のアーマー騎兵が次々と姿を現した。


 傭兵側の沼亀はほとんどが渡河中であったから、突然の襲撃によって次々と被弾し、爆発した。


 尚、指揮官は数発被弾したが爆発する事なく、対岸へと渡りきっていた。なかなかしぶとい。


「ゴヨウ!」


「ああ!」


 混沌とゴヨウが駆る猟犬は、ローラーダッシュで小さな円を描きながら四方へマシンガンを連射する。


 二人の息のあったコンビネーションに、奇襲してきた敵軍のアーマー騎兵が、次々と撃破されて爆発した。


 だが、そこに新たに現れた青いアーマー騎兵を視認して、ゴヨウの緊張は高まった。


「あ、青いやつだー!」


 傭兵の指揮官は再び沼にとびこみ、真っ先に逃げ出した。


 ゴヨウの駆る猟犬は、その名のごとく、新たに現れた青いアーマー騎兵へと突撃した。


「ゴヨウ!」


 混沌はコックピットで叫んだ。


「キリオー!」


 青いアーマー騎兵のコックピットで、パーフェクトファイターのイプエロンも叫んだ。


「誰の事だよ……」


 ため息をもらしつつ、ゴヨウの猟犬は右に左にと敵弾を避けつつ、マシンガンで応戦する。


(狂気のような奴の闘志、それに比べて俺の心は燃えはしない、俺があえて受けて立つのは…… その哀れな闘志を満たしてやるためかもしれない……)


 ゴヨウは混沌のサポートを受けながら、イプエロンの駆る青いアーマー騎兵と交戦する……



   **


「いやあ、面白かったのう、バーチャルゲームというのは!」


 混沌は興奮冷めきらぬ様子で缶ジュースを飲んだ。


 場所はアバキハラのゲーセンだ。


 混沌はゴヨウと共に話題のバーチャルゲームを楽しんでいたのだ。


「それにしてもAI女王め、わらわの楽しい時間に割り込んできおって」


「え、何の事?」


「こっちの話じゃ」


 ゲーセンの隅の自動販売機側で混沌とゴヨウは尚も話しこんだ。傍目には若い恋人同士のようだった。

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