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虚無戦線  作者: MIROKU
青い春フェスティバル
32/99

虚無の中で愛を叫ぶ!の巻!2

 人の意識の及ばぬ世界での情勢は。


 正義の概念を守る正義マンが狂気ファナティックの元へ向かったが、戻ってこず、何の連絡もない。


 それは何を意味するのか、正義という概念が人の世から消え失せたのか。


 それは世界を覆う悪意によって、破滅の未来に人類が向かっている証拠なのか。


「そんな事させないわ!」


 ギテルベウスが拳を固く握りしめた。


 ハロウィンの女妖魔たる彼女が、まさか人類を守る側に立つとは。


「美味しい食べ物がなかったら、あたし生きていけない!」


 ギテルベウスの言葉に彼氏のソンショウは脱力して横倒しになった。いや、案外その発言はギテルベウスの照れ隠しなのではないか。彼女が本当に守りたいものとは――


「で、では行こうゾフィーさん」


「は、はい」


 とゾフィーはチョウガイの腕に抱きついた。


 二人はまるで新郎新婦のような厳かさで虚無戦線を進み出す。


 二人の迫力に圧倒されたか、虚無戦線を漂う悪霊死霊が次々と消滅した。


「間違ってんじゃねえか! ……いや正しいのか?」


 ソンショウは考えこんだ。四千年の間に幾度も生まれ変わり、そのたびにチョウガイと共に戦ったソンショウ。


 その彼は最後の人生で即身仏の修行を成し遂げ、自らの力で人間を越えた。


 死を越えたソンショウは自在にこの世とあの世を行き来するが、その彼にもチョウガイとゾフィーの行動の意味がわからない。なんでー?って感じである。


「男と女が未来を創るからよ」


「会長ー、そんな事もわからないんですかあー?」


 虚無戦線には、さくらとこゆきも現れた。


 さくらもこゆきもソンショウに密かな思いがある。


「あれ、なんでお前らまで」


「会長と二人になりたくて」


「気になる人は気になるじゃないですかあー」


 ソンショウ、さくら、こゆきの三人の間に明るい雰囲気が生じて、混沌の闇を打ち払う。


 だが、ギテルベウスが面白いわけがなかった。


「死ーにーさーらーせー!」


 ギテルベウスは知人から借りたチェーンソーを振り回して、三人に襲いかかった。


 その形相は鬼女そのものだ。

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