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虚無戦線  作者: MIROKU
青い春フェスティバル
28/99

萌えよ、ケン!の巻! 1


   **


 駅前のラーメン屋に新たなバイトが入った。


「へい、らっしゃい!」


 元気で体格のいいバイトは地方から来たケンという男性だ。


 この春から大学に入学し、生活費の足しにするために駅前のラーメン屋でアルバイトをしている。


 柔道経験者でいい体格をしている。性格も明るく元気で、なかなか評判のニューフェイスだ。


「……ね、昔は文学系が好きだったけど」


「今はガッツリ体育会系だよねー」


「あたしら肉食女子だしねー」


 水商売系のキレイなお姉さん方も、ケンの働くラーメン屋に来るようになった。


 店主(cv:千○繁さん)も唇の端に笑みを浮かべている。


「へい、らっしゃい! ……あ」


 ケンは咳払いした。


 入店したのは長くサラサラした黒髪を持つ、やたら線の細い欧州系美女だった。


「ご、ご注文は!」


 ケンは美女を前にして真っ赤になった。気持ちがバレバレだ。


「……ごっつい・つけ麺セット、ニンニク増し増し」


 美女はか細い声で注文するとカウンター席に座った。


「へーい、ごっつい・つけ麺セット、ニンニク増し増しー!」


「あいよ」


 店主(cv:○葉繁さん)は黙って麺を茹で始めた。


 寡黙で腕のいい職人に思われるがちだが、ちょくちょく注文を間違えている。それでもお客に愛されているのは、不思議な人徳を持つからか。


(美人だよなー)


 ケンは美女の横顔を何度もチラ見した。


 そんな彼の視線に気づいているのかいないのか、美女はズゾゾゾゾと豪快につけ麺を食べ始めた。


 ごっつい・つけ麺セットは麺450グラム(通常の三倍前後)のボリュームに加え、ギョーザと半チャーハンがつく。


 男のケンでも全てを食べるのは、なかなか難しい。


 だがカウンター席に座った美女は、つけ麺を飲み物であるかのように平らげていく。


「……おじさん、煮玉子追加」


「あいよ」


 店主(cv:千○繁さん)は美女が差し出したお椀に、店自慢の手作り煮玉子をお玉で放りこんだ。


 そして美女は追加煮玉子と餃子をおかずに、チャーハンを平らげていく…… 只者ではなかった。


「ヒューイットさんスゲーな……」


 ケンは小さくつぶやいた。美女はチラリと横目でケンを盗み見した。


 この美女の名はヒューイット。


 駅前のスーパーで働いている。欧州出身だが日本語は流暢だ。


 華奢な体型の儚げな欧州美女――


 ケンは、そんなヒューイットが気になっていた。スーパーでは多少は顔を知られていたので、ケンは名前を知る事ができたのだ。


「……あなた」


「え、はい?」


「名前は……?」


「け、ケンです!」


 それがケンとヒューイットのファーストコンタクトだった。


 どうでもいいが、ヒューイットの吐息はあまりにもニンニクの匂いが強すぎて、ケンは涙目になった。

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