萌えよ、ケン!の巻! 1
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駅前のラーメン屋に新たなバイトが入った。
「へい、らっしゃい!」
元気で体格のいいバイトは地方から来たケンという男性だ。
この春から大学に入学し、生活費の足しにするために駅前のラーメン屋でアルバイトをしている。
柔道経験者でいい体格をしている。性格も明るく元気で、なかなか評判のニューフェイスだ。
「……ね、昔は文学系が好きだったけど」
「今はガッツリ体育会系だよねー」
「あたしら肉食女子だしねー」
水商売系のキレイなお姉さん方も、ケンの働くラーメン屋に来るようになった。
店主(cv:千○繁さん)も唇の端に笑みを浮かべている。
「へい、らっしゃい! ……あ」
ケンは咳払いした。
入店したのは長くサラサラした黒髪を持つ、やたら線の細い欧州系美女だった。
「ご、ご注文は!」
ケンは美女を前にして真っ赤になった。気持ちがバレバレだ。
「……ごっつい・つけ麺セット、ニンニク増し増し」
美女はか細い声で注文するとカウンター席に座った。
「へーい、ごっつい・つけ麺セット、ニンニク増し増しー!」
「あいよ」
店主(cv:○葉繁さん)は黙って麺を茹で始めた。
寡黙で腕のいい職人に思われるがちだが、ちょくちょく注文を間違えている。それでもお客に愛されているのは、不思議な人徳を持つからか。
(美人だよなー)
ケンは美女の横顔を何度もチラ見した。
そんな彼の視線に気づいているのかいないのか、美女はズゾゾゾゾと豪快につけ麺を食べ始めた。
ごっつい・つけ麺セットは麺450グラム(通常の三倍前後)のボリュームに加え、ギョーザと半チャーハンがつく。
男のケンでも全てを食べるのは、なかなか難しい。
だがカウンター席に座った美女は、つけ麺を飲み物であるかのように平らげていく。
「……おじさん、煮玉子追加」
「あいよ」
店主(cv:千○繁さん)は美女が差し出したお椀に、店自慢の手作り煮玉子をお玉で放りこんだ。
そして美女は追加煮玉子と餃子をおかずに、チャーハンを平らげていく…… 只者ではなかった。
「ヒューイットさんスゲーな……」
ケンは小さくつぶやいた。美女はチラリと横目でケンを盗み見した。
この美女の名はヒューイット。
駅前のスーパーで働いている。欧州出身だが日本語は流暢だ。
華奢な体型の儚げな欧州美女――
ケンは、そんなヒューイットが気になっていた。スーパーでは多少は顔を知られていたので、ケンは名前を知る事ができたのだ。
「……あなた」
「え、はい?」
「名前は……?」
「け、ケンです!」
それがケンとヒューイットのファーストコンタクトだった。
どうでもいいが、ヒューイットの吐息はあまりにもニンニクの匂いが強すぎて、ケンは涙目になった。




