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虚無戦線  作者: MIROKU
混沌極まる時
10/99

商人編 光と闇と……!の巻!


     **


 夕刻、海の家も店じまいとなった。暗くなってきた海岸に海水浴客の姿はない。


「まあ、元気出すアルよ。これはまかないアル」


 海の家を経営していたミス・パーコーメンは――


 「七人の悪魔商人あくましょうじん」の紅一点は、テーブルに突っ伏している大魔王サタンに言った。


 大魔王は安い時給でよく働いてくれるのが、ミス・パーコーメンには嬉しかった。


 どうでもいい話だがミス・パーコーメンはエジプトに遠い親戚がいるが、彼は無量大数軍ラージ・ナンバーズとの戦いで戦死したという。


「ゲギョ、ゲギョ……」


 大魔王はミス・パーコーメンの用意してくれたまかない(従業員用の食事)のギョウザやチャーハンを食べながら涙をこらえた。


 昼間、白銀マンに完膚なきまでに叩き潰されたのが悲しいのだ。


 大魔王が人類の未来を守るために善行を施すのは、まこともって不本意である。


 迷子を両親の元に送り届け、溺れそうになっている若者を助け出し、店を訪れたぎこちないカップルには、さりげなく「彼氏はセットで。彼女は?」などと意識するような発言をした。


 それもこれも人類の未来を守るためだ。


 人類が滅びれば、大魔王もまた存在しえないのだ。人類の悪心エナジーが大魔王の栄養なのだから。


 だから大魔王は働く。そんな彼を、今だけは正義マンも見逃しているようだ。


 正義マンの持つ「裁きの天秤」は、大魔王を罪人と断じなかった。


「……ほっとけないアルなー」


「ゲ、ゲギョ?」


「オホン、元気出すアルよー!」


 水着姿のミス・パーコーメンは大魔王の背をバンバン叩いた。彼女なりの照れ隠しかもしれない。






「……シャバババー、ここにも新たなカップルが誕生か」


「ニャガニャガ、未来は汝のカードの中に!……という事ですね」


 眼マンと精神マンは海の家に誕生した新たなカップルを微笑ましく見つめていた。


 白銀マンは面白くないので、手にしたタブレットでプリピュアを観始めた。


 今年で二十年続くプリピュアシリーズ、彼女達も商人しょうじんと同じく、概念や存在の意義を守る守護者ガーディアンなのだ。


     **


 日曜のスーパーヒーロータイムの一角を担うプリピュア(戦乙女)。


 その熱き戦いの歴史を振り返ってみよう。






 初代「ふたりはプリピュア」のブラックとホワイトは、強力チームと対戦する。


「パワフル・ホワイト・バックブリーカー!」


 初代ピュアホワイトは圧倒的なパワーと柔法テクニックでペンチ男をKO。


 続くレオパルドォンを瞬殺、ゴーレム男にも圧勝、副将キャノンボーラーとはわざと引き分ける余裕っぷり。事実上、四人抜きである。


 大将戦ではピュアブラックが強力に圧勝し、勝利した。


 初代プリピュアは一切の無駄がない。


 力のブラック、技のホワイト。


 それがシリーズの礎となった。






 続くスプラッシュのブルームとイーグレットは、超人バーベQチームと対戦。


 先鋒ブルームが鷹マン、VTR男爵を撃破。


 だが、中堅の帝王ミキサーによって精霊の力を封じられたブルームは敗北。


 同じく精霊の力を封じられているイーグレットは、辛くも帝王ミキサーに勝利する。


 が、超人バーベQチーム副将の百tキングの前に力尽き、試合会場の天井へと投げ飛ばされる。


 イーグレットが天井に激突する瞬間、彼女の体を二人の麗しき人影が受け止め、命を救った。


 それはブルームとイーグレットと戦い、理解しあい、友情パワーに目覚めたミチルとカオルの二人の姉妹であった。


「スプラッシュチーム副将、前へ!」


「はい!」


 戦闘モードのカオルは、ミノリからもらった鉢巻を締めてリングに上がる。


 公式にはプリピュアに含まれないミチルとカオルだが、だからこそ二人は尊い。


 二人は闇の眷属であったが、ブルームとイーグレットとの戦いを通じて愛に目覚めた。


 それは人の子を喰らう訶梨帝母カリテイモが、仏陀に自身の子を隠されて嘆き悲しみ、諭された後に仏法の守護者・鬼子母神に転じた事に似ている。


 スプラッシュは光と闇の共闘がテーマなのだ。


「ミノリ・ブランディング(※ミノリの烙印押し)ーッ!」


 苦戦しながらもカオルは勝利する。が、百tキングの執念の一打によって、試合は引き分けとなった。


「がんばって、ミチル! この試合が終わったら、パンパカパーン(※パン屋の店名)の特製メロンパンをごちそうするわ!」


「ケーキと紅茶のセットもつけてね!」


 ミチルはブルームに向かって微笑み、トップロープを飛び越えてリングに立った。


 体から炎を吹き出す超人バーベQに苦戦するミチル。


 窮地に追い込まれる彼女を救ったのは、天から差し込んだ一条の光であった。


 それは善悪の心を超越した光――


 正しい技を放たぬ者への、神罰たる天雷であった。


 受け継がれるべきものは、正しく受け継がれなければならないのだ。


「たあー!」


 ミチルは最後の力を振り絞って跳躍した。


 そしてすでに空中にある超人バーベQの首に両足首をひっかけ、逆立ち状態で落下していく。


「ミチル・スペシャル!」


 ミチルは両手でリングに着地すると同時に、超人バーベQに首4の字をかけた。


「グヘッ……!」


 超人バーベQは衝撃に吐血し、ミチルの魅惑の太ももに絞められた興奮に鼻血を吹いた。


 スプラッシュチームの勝利であった……!


     **


 白銀マンはそこまで観終えると、タブレットの電源を切り、眠りに就いた。


 人類の未来は闇の中だ。


 希望があるのだとしたら、それは光と闇が力を合わせた先にある。

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