試練
ホーリーシップは奇襲に失敗した人々を回収した。
どの顔も打ちひしがれていた。
「カトリーヌ。人を殺してしまった」
エルネストは右手で髪の毛を握った。
カトリーヌは思った。
可哀想な坊ちゃん。
魔獣、幻獣、アンデットは倒せても、ヒューマノイドタイプは決して殺さなかった。
そんな依頼も受けなかった。
偶然出会ってしまったら脅して追い払った。
優しい人。
同時に心を殺すことも出来なかった。
「坊ちゃん、それはあなたが一人で乗り越えなくてはならない試練です。
大丈夫です、女神ソフィアはその人に乗り越えられない運命を与えはしません」
「ああ、そうだな」
ゴーストシップが空中に浮き上がる。
彼らが最後の突撃を敢行してくる。
船内にドヨメキが起こる。
「あの船を撃沈しろ」
グレゴリが叫んだ。
「無理です。
病院船ですょ、攻撃できる魔法使いは乗っていない。
いったい何を期待しているんですか。
持ち込んだ携帯機関銃で武装が最高ですよ」
「確か作業用の水陸両用巨神兵を積んでいたな」
「いまさら、いったい何をするつもりだ」
「マールズを追うに決まっているだろう。
あの帆船が突っ込んで来たという事はマールズは降りている」
「アンタ、どんな過去があれば、どんな怒りがあれば、女の子をそんなに憎めるのですか」
「ヤツは吸血鬼だ。根絶すべき人類共通の敵だ」
「あなたは悲しい人だ」
黙ってグレゴリは巨神兵へ向かっていた。
「絶対魔法防御はもういい。
総員退避しろ。
船足は向こうのほうが早い。
攻撃魔法は使っていない。
飛行石を爆発させる気かも知れん」
エルネストが逆方向に歩き出した。
船内の部屋につくと魔法陣を起動する。
聖印を結んだ。
青白い光が船から発せられる。
「坊ちゃん。何をやっているんですか、
早く脱出しないと、
最後の船が出てしまう」
脱出を指揮していたカトリーヌが走ってきて扉を開けた。
部屋の魔法陣が最大限輝いていた。
「浄化だ、ゴーストシップが爆発する前に、乗組員の魂を一人でも多く輪廻転生の環に引き戻す」
「坊ちゃんが何故そこまで背負わなくてはいけないのですか、アンデットは強制された人もいたでしょうけど、多くは死の精霊の引導を拒み、未練を選択した人々。
坊ちゃんが命をかけてまで救われる資格はない」
「ゴーストシップの最期に対する、ホーリーシップの意地だ。
誰かが聖印を維持せねばならない」
「坊ちゃん、止めて」
「カトリーヌ。
最後のお願いだ。
聖剣を両親に返してくれ。
立派だったと伝えてくれ。
そして一族の掟を忘れて自由に生きて」
聖剣を投げた。
「イヤです。坊ちゃん。
聖剣は人魚や半魚人に拾われて伯爵家に戻りますょ。
血縁の中からしか選ばれないのですから」
カトリーヌがエルネストに抱きついた。
「坊ちゃん、あなたが死ぬ時は、私が死ぬ時です」
「馬鹿が・・」
魔法の光が2人を包む。




