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脱出
カトリーヌが扉を開けた。
「モアさん、戦える人は皆でて行きました。
逃げるなら今です」
モアはベッドから跳ね起きた。
「君はいいの?」
靴を履きながら聞いた。
「私、モアさんのような天才がこんな所で無惨に殺されるかもしれないなんて、耐えられない。
モアさんは人類の宝物です」
「人類の宝物か・・、
カトリーヌさん、「天才」「発明家」「科学者」「英雄」それら全ては経済という海に浮かんだ小舟だょ、たしかに世代を進めた、だれも見向きしない物に目を向けた。カリスマがあった。
人の豊かさの余剰が産んだ幸運な人。
「特別な人」じゃないよ。
人類の中から誰か、遠からず到達する事象なんだ」
モアは立ち上がった。
「人の豊かさですか」
「何を豊かと言うのか人によって違うけど、格差はできたが文明は人々をだんだん幸福にしている。人類の歩みは間違いじゃないょ」
モアがすれ違いざま手を握ろうとした。
「ありがとう、何とお礼を言っていいか」
カトリーヌが人差し指を唇においた。
「ダメですょ、モアさん。神官を口説くのはソフィア正教への攻撃です」




