かつての日々
ゴーストシップ。
三百年前の幽霊船。
私という種を活かすための希望の船。
いまだ四角い帆をかがける時代遅れの船。
魔法文明カステラヤが自然科学のエスカチオンに敗れた、多くの魔導科学者が未だ健在のパルシャ帝国に流入、そして当時最新の技術で作られた空行く船。
しかし蒸気船ホーリーシップが多数建造され、一度も大空を駆ける事なかった。
海賊帽を被ったスケルトンが近付いてくる。
片手にフックが、片足は義足、眼球がないのに眼帯をつけている。
「ブラハム船長、調子はどうですか?」
マールズ姫が微笑みながら聴く。
「処女航海で多国籍軍突破は身震いしますな、こいつが内陸を飛べればいいけど。あいにくコイツの積んでいる飛行石では1時間ほどしか飛んでられない。モアが言うにはホーリーシップに海賊船や魔法船は250年前に駆逐され、現在の鉄の船は魔法防御に予算を振り分けていない。だからワンチャンあります」
ブラハム船長は横に並んだ。
目の前に青い髪の少年がいる。
可愛い見かけにだまされてはいけない。
妖精で、多くの女を毒牙にかけた300才を超える技術者。
日本が敗戦した時、可変戦闘機・霊零式改をUボートで当時中立であるパルシャ帝国に亡命してきた反重力機器の世界的第1人者。
第一世代の大祖父様との面会の時、初めて紹介された。
その時は型通りのあいさつですませた。
二人きりになると13才ぐらいの外見なのにタバコを吸う。
「不死者は吸血鬼と違って血を吸えば妖艶な美女になるんだろ、なんでそんな小娘の姿をしてるの?」
「私はアンタと違って若いのょ、飲み過ぎてもお腹いっぱいになるだけだから、ご期待にそえなくて悪かったわね」
「まだ、10代なのか。姫さん。混沌大陸に逃げれば大丈夫だょ」
新大陸の裏庭・混沌大陸にしろ、世界中の民族がオリジナルスペルを持ち宇宙船が各地に墜落し独自の文化を育んだ。
植民地獲得戦争と独立戦争の対立が同時に起き世界分割とは行かずに資源地帯と工業地帯の点の支配してるにすぎない。
民主主義の島国バレンシアは世界中に植民地を持ち、日の沈まない帝国を標榜するがまだ抜け道はいくらでもある。
第一世代と第二世代は最後の戦いを挑む。
兄、姉、いとこの第三世代以下は陸路逃亡した。
全員に自決ようの白木の杭を箱に入れて渡された。
我々は人間の様に簡単には死ねない。
生きて虜囚として苦しめられるよりはという優しさ。
私だけありったけのスケルトンやマミー(防腐処理されたゾンビ)や魔法の使える悪霊がのる、幼い私は可愛いがられたのだ。
みんな百才を超えている。
アンデットは輪廻転生の環から外れている。
宇宙精神生命体が魂の修行の場で用意した惑星。
何も脅える必要はない。
弱者が滅亡するのは進化論で語られる自然の摂理。
みな自らの民族の生存圏をかけて戦争を行うのだ。
革命などの混乱を潜り抜けると召喚された勇者による、緩やかなソフィア正教圏統一。
連合と称した。
シベリアに拡張する北部ノーマ帝国の魔王を倒した後は自民族優越論を掲げて亜人族を弾圧し、巨神戦争時には収容所で粛正された。
戦えるだけ幸せなのだ。