自分のために
明楽から奥村の話を聞いた翌日。俺は放課後に、山田のいる四年二組の教室へとやってきた。教室内には、山田とその他の生徒数人が残っていたが、明楽と奥村の姿はない。きっとどこかで話をしているのだろう。好都合だ。
「おい、山田」
俺は教室に入り、山田を呼んだ。教室に残っていた山田以外の生徒は、驚いた顔をしていた。
「神山じゃん。授業以外で話すのは久しぶりだなあ」
山田は俺の顔を見るなり、笑顔で答えた。その笑顔に嫌悪感を覚えながらも、俺は山田に一言だけ言い放つ。
「話があるから来い」
山田は俺の言葉を聞いて、顔から笑顔が消えた。山田は数人の生徒に声をかけ、俺のところまでやってくる。
「話ってなんだよ?」
山田はさっきまでの笑顔が嘘のように、威圧感のある目で俺を見た。
「奥村のことだ」
「……あっそ」
俺と山田たちは、教室を出て歩き出す。人気のない場所へ、緊張感を帯びながら。
やってきたのは、校舎裏だった。山田はいつも、人を痛めつけるときは校舎裏に行く。ここで何度も山田が人を痛めつけているところを見た。
「で、話ってなんだ?」
山田は俺に向き直って聞いた。山田の取り巻きたちは俺と山田を取り囲むように立っている。俺は山田だけを見据えて答える。
「さっきも言ったけど、奥村のことだ。あいつを虐めるのはやめろ」
「はぁ……まだそんなこと言ってんのかよ」
山田は呆れたように溜息をついた。
「おまえには関係ないだろ。それとも奥村が言ったのか? 助けてくれって」
「それは……」
奥村は、俺や明楽に助けてくれとは言わなかった。それどころか、明楽に「関わるな」と叫び、俺には隠し事をした。きっとあいつは、俺達に放って置いてほしいと思っているんだろう。でも、そういうわけにはいかない。俺はここで山田を止めないと、今まで俺がやってきたことがすべて間違っていたと自分で認めることになってしまう。俺は人を助けることを間違っていることだと思いたくはない。だから、明楽の誘いに乗って桜田探偵クラブに入ったんだ。ここで引くわけには行かない。
「別に奥村が助けてくれって言ったわけじゃない」
「じゃあ、何で出しゃばってくるんだよ」
「……別に、助けを求められてようが、求められていなかろうが、関係ない。俺は、一人で困っているやつを放っておけないだけだ」
一人でいることの寂しさは、良く知ってる。
「お前、自己中だな」
なんとでも言え。俺は間違っていない。
「久々に、痛い目に合わせてやるか」
山田の言葉を合図に、周りの生徒達がにじり寄ってくる。俺は覚悟を決めた。




