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桜田探偵クラブ  作者: さとしひかる
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三年生

 あれは去年の春頃の出来事だった。二年生から三年生に上がってクラス替えの発表があった。みんなは掲示板に張られたクラスの振り分けを見て、一喜一憂していたが、俺は誰と誰が同じクラスなのかなんて興味がなかった。自分のクラスを確認し、一人だけで真っ先に教室へと向かった。俺のクラスは一組らしい。


 席に着いて外をぼーっと眺めていると、ぞろぞろと同じクラスのやつらが友達同士で会話をしながら教室に入ってきた。やがて一瞬で教室の中は生徒でいっぱいになり、俺は少し居心地の悪さを感じた。俺のほかに誰とも喋っていない奴はいないかと教室の中を見渡す。すると、誰とも喋っていない奴を何人か見つけた。ずっと本を読んでいるやつ、ぼーっと時計を眺めているやつ、机に突っ伏して寝ている奴、そいつらはみんな、俺と目が合うと、すぐに顔をそらしてしまった。大抵のやつはみんな、俺を見たらすぐに顔をそらす。最近気づいたが、どうやら俺の顔は普通の人よりも目つきが悪いらしい。俺に友達がいないのも、この顔が原因のような気がした。


 しばらくクラスの様子を眺めていると、初めて見る先生が教室に入ってきた。このクラスの担任になる先生だろうか。先生が教卓に着くと同時に、学校のチャイムが鳴った。


「よし、みんな揃ってるな。それじゃあまずは、先生の自己紹介から始めるぞ」


 先生は、チョークを持って黒板に自分の名前を書きだした。北島……何と読むんだろう。


「名前は北島佳亮だ。これから三年一組の担任としてやっていくから、よろしくな」


 よしあきと読むのか。まあ、教師の下の名前を呼ぶことは基本的に無いから、覚えなくてもいいな。


「それじゃあ、出席番号順に自己紹介をしてもらおうか。それぞれ自分の名前と、好きなものとか、趣味とかを教えてくれ」


 北島先生は、あまり無駄話をせずに、淡々と自己紹介を促した。俺は出席番号が三番だったから、急いで話すことを考えなくてはいけない。こういう風に、出席番号順で当てられるといつも最初の方になる。その度に、何で俺はカ行なんだと、どこにぶつけていいか分からない怒りが少しだけ湧いた。


「じゃあ次、えーっと、神山」


 先生は気だるげな声で俺の名前を読んだ。俺は教卓まで歩いていき、そこからクラスメイト全員の顔を眺めた。どいつもこいつも、馴染みのない顔ばかりだ。でもそれは、友達のいない俺からすれば当然のことだった。


「えー……神山武です。趣味は……特にないです。好きなものは……祖父の家にいる金魚です。よろしくお願いします」


 自己紹介を言い終えると、パラパラと疎らな拍手が送られてきた。俺は、まあそういう反応だよな。と一人で納得しながら席へと戻った。


 その後も自己紹介は淡々と進んでいった。自己紹介の中にボケを入れて笑いを取る奴や、趣味や好きなものが多い奴など、たまに変な奴がいたが、それ以外は特に気になる奴はいなかった。そして、最後の一人がようやく自己紹介をはじめた。


「山田凌久です! 好きなものはスポーツ全般。趣味はスポーツ観戦です。よろしくお願いします!」


 こうして全員が自己紹介を終えた。あとは、三年生になってからの心構えとか、そういうオリエンテーション的な話をしてその日の学校は終わった。


 さっさと家に帰ろうと、真っ先に教室を出た俺は、廊下を歩きながら隣のクラスの様子を見た。二組も帰りの会を終えて、全員が帰ろうとしているようだった。教室の中で何組かのグループが出来上がっていく中、他よりひと際大きなグループがあった。その中心には、一人の女子生徒がいて、廊下にいる俺にまで届いてくるくらいの大きな声で笑い声をあげていた。俺はたぶん、ああいうグループの中心になれるやつとは仲良くなれないな。そう確信して、一人校門まで足を進めた。


 三年生になってから、しばらくの月日が流れた。俺は相変わらず友達が出来なかったが、周りのやつらはもう既に自分たちのグループを作り上げていた。みんなそれぞれ一、二年の時からの友達がいたんだろう。最初から、何となくいくつかの仲良しグループみたいなものがあった。


 中でも、特に目立つグループがあった。そのグループは、山田という奴を中心にしてるグループで、騒がしそうなやつらは大体そのグループに属していた。あとは、頭がよさそうな奴ら数人でできたグループと、顔がいい奴らでできたグループがあった。どこのグループにも属していないのは、俺を含めて三人程度だった。因みに、女子のグループは全く把握していない。全員仲がよさそうに見える。


 最初の頃は、何度か一人でいる奴に声を掛けようとしたことがあったが、やはり俺の目つきが悪いのか、話しかけた傍から俺を避けてどこかへと行ってしまう。それを何度か繰り返して、俺は自分から話しかけることを諦めた。

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