番外 「気が置けない」
どんな男でしょう?
「彼は気が置けない男だ」
A.気を許せない、油断できない男
B.遠慮しなくて良い、気づかいしなくて良い男
答は「B」です。
Aだと思っている人が多いと思います。広辞苑(第六版)にも「近年誤って、気を許せない、油断できないの意で用いることがある」と書かれているぐらい、いつの間にやら完全に意味が逆になってしまいました。
ある年齢以上の人は、石川優子とチャゲが歌って大ヒットした「ふたりの愛ランド」(作詞:チャゲ・松井五郎)を思い出すのではないでしょうか。この歌では、女の人から女の人へと渡り歩くピンボールみたいな「あなた」は気がおけない、と歌っています。
「気がおけない」を、「気を許せない、油断できない」の意味で使っていますね。
※歌ネット https://www.uta-net.com/song/3945/
この曲は1984年のものですが、この歌が誤用のはじめかなのか、あるいは当時すでに(作詞者の周辺では)ある程度使われていたのかは定かではありません。しかし、この歌で「気が置けない」という言葉を知った人も多くいたでしょうから、誤用が一般に定着する役は果たしたのではないでしょうか。
褒めたつもりで「あの人は気が置けない」といったら、「不正行為でもやってるのか」とか「浮気性なんだろうか」と受け取られる、なんてことが起きかねません。この言葉を使うときはご注意を。
※※
1980年代に発行された、とある雑誌に、気がおけないの意味が逆転している旨の記事が載っていた記憶があります。
私はその記事を読んだときに、この歌を思い出したのですが、バックナンバーで読んだので、歌と記事、どちらが先なのか判断できません。誌名の当たりは付いたのですが、確認するには国会図書館にでも行かないと……。




