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13.排出――宰相は捨てちゃダメ
「宰相を排出してきた名家」
「多くの宰相を排出してきた」
こんな表現をよく見ます。しかし「排出」は「中にたまっているいらないものを外へ押し出すこと」(『広辞苑』第6版)です。
「火力発電は二酸化炭素を多く排出する」などという使い方をするものですね。
私なんか「宰相を排出することの多い家柄」なんて文を目にすると、大きな機械の排水口から宰相がうにゅーと出てくるような図を想像してしまいます。
「代々の宰相をハイシュツ」とか「毎年東大合格者を多くハイシュツ」という場合に使うのは「輩出」です。
どちらにも「非」という部分があるので間違いに気づきにくいのでしょうか。
ここで一つ注意しなければいけないのは、「輩出」とは「続々とつらなり出ること」(『広辞苑』)をいう、という点です。
一人だけではなく、続々と出る場合に使う言葉なのです。
「我が家は宰相や大臣を多く輩出してきた名家として重んじられている」
とは言えても、
「私が王太子妃になれば、我が家は王太子妃を輩出した家として、同じ侯爵家の中でも重んじられることになる」
とは言えないのです。




