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レナードが会場となる侯爵家に着き、二人が現れたとたん、さざめいていた会場が静まり返った。

そしてレナードの前に、待ちくたびれたとばかりに不機嫌なメーガンがやって来る。

相変わらず孔雀にでもなったかのような、ド派手な装いで。


「遅かったわね、レナード」

胸の前で腕を組み、いかにも高飛車な態度でレナードを見上げた。

いつもと、何ら変わる事のない通常運転のメーガンに、レナードは爽やか笑顔の仮面を被る。

「一昨日に突然現れガーデンパーティに参加しろと言ったのはそちらでしょう?これでも私は忙しい身なのですよ」

メーガンの米神に、ピシッと青筋が浮かんだ。


そしてここまで長かったが、冒頭の宣言へと戻るのだ。


「レナード・ペルソン!貴方との婚約は破棄するわ!この場にいる人達が証人よ!!」と。



婚約発表から約一年。

ようやくこの日がきたか・・・と、レナードは馬車の中で緩む口元を堪える事が出来ず、気を抜けば満面の笑みを浮かべてしまいそうなほど浮かれていた。

婚約破棄の証人は沢山いる。彼女が望んでの事だ。

メーガンは自分に有利になると思い込んでのあの場での婚約破棄宣言なのだろうが、ティラー公爵や王家の慌てふためくさまが想像できて、ほんの少しだけ溜飲が下がる。

だが、まだまだこれからが本番だ。

一度、屋敷に戻りすぐさま行動に出なくては、相手もどの様な策を投じてくるかわからない。

権力を使って、証人の口封じなどをする可能性もあるのだから。


まぁ、こちらにはユーリン王国の第二王子がいるし、全ての証人の口を封じることは不可能だろう。


因みに、アミールはあの場に残してきた。

本人も残ると言っていたので、代わりの馬車を送る旨を伝え、彼の健闘を祈りつつレナードだけ退席してきたのだ。


それからのぺルソン伯爵家の行動は早かった。

他者からティラー公爵家に話が行く前に、伯爵夫妻とレナードが公爵家に乗り込み婚約破棄の事実を伝えた。

そして、契約書通りにメーガン有責の破棄であり、レナードには一切の落ち度はなかった事を強調。

今回の騒動も、一昨日にいきなり屋敷に押しかけ、ガーデンパーティへの参加を強要したのだと告げれば、どこに証拠があるのだと何としても婚約を継続したい公爵家が食い下がってくる。

だが、レナードの傍にはユーリン王国第二王子が常に傍にいた。

婚約破棄された現場にも。


使えるモノは何でも使い、有利な立場を絶対に崩さない。


そして、長い長い時間をかけぐうの音も出ないほど追い詰め、ようやく婚約破棄やそれに伴う重要書類にサインさせたのだった。

昼過ぎに公爵家に乗り込み、屋敷に戻ってきたのはもう日付も変わろうかという時間。

疲れ切った三人は、祝杯は明日挙げる事にし、早々に自室へと戻ることにした。


翌日、アミールに事の次第を報告。そして、自分が帰った後の会場の様子を聞いた。

レナードが帰った後は、最後までなんとも言えない雰囲気のままだったようだ。

これといった混乱もなく「あぁ、やっぱり破棄になったんだ」という、当然だねという感じだったらし。

ただ、数人の令嬢がレナードの後を追うように帰ったという。

アミール自身どうだったかと聞けば、これといった成果はなかったが、彼が求めていた女性がメーガンだったと確信したようだ。

取り敢えず彼女とお近づきにならなければ話は始まらない。

婚約だとか恋人だとかいう前に、いいように言いくるめユーリン王国へ連れていく事を勧めた。

彼は宝の山の所有者だ。宝石の話を出せばきっと、ホイホイ付いていくはず。

ドレスよりも宝石が大好きなメーガン。他国で珍しい宝石があると聞けばすぐさま飛んでいくという、バイタリティがある。

そこで時間を稼いでもらって、公爵家からは慰謝料を貰ってからアミールには求婚なりなんなりしてもらう事にしていた。

支度金に関しても、あくまでも花嫁の為の支度金。

花嫁となる人がすでに嫁ぎ先の国にいるのなら、支度金は必要ないはすだ。

屁理屈だろうと何だろうと、支度金を慰謝料に宛がわせないためなの対策なのだから。


そこら辺の打ち合わせと助言を済ませると、レナードはとてもいい笑顔をアミールに向けた。

「ぺルソン伯爵家はメルロ国に移住する事にしている。お前に与えられる猶予は七日間だ。それまでにメーガンをつれてユーリン王国へ帰れ」

笑顔なのに怖い。

アミールは首を一生懸命縦に振りながら、一日でも早くこの国から離れることを心に誓ったのだった。


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