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「兄弟仲はよろしいんですよね?」

レナードの話を聞いただけでは、仲が良いとは言えない気がしてセシリアは眉を寄せた。

ましてやレナードと王太子の雰囲気が似ているからと突っかかる。これを、仲が良いと言えるのか。

憤るような、そんなセシリアの表情も可愛らしくて、一瞬レナードの鼻の下が伸びそうになったが、すぐさま表情を整える。

「アミールの話からだけだから判断は難しいけど、王太子はアミールを心配していたようには見えましたよ。本当かは、わからないけれどね」

あれからレナードとアミールは手紙のやり取りをしており、やはり側室は皆王太子の許に移っていたと書いていた。

「なんとなくですが・・・アミール殿下がたとえどんな理由であれ、自分を選んでくれる人を探しているというのが、わかったような気がします」

「俺がメーガンの事を色々書いた内容が、彼の求めているものに近かったらしく、それで興味を持ったらしい」

レナードの容姿はアミールの兄にも匹敵するほど美しい。

だが、それに靡くことなくただひたすら散財だけを生きがいとしている。


もしや、金さえ持っていれば誰にも誘惑されないのでは?それが王太子である兄にも・・・


と思ったのではとレナードは推測していた。

「だから、メーガンと会って確かめたいのでは。できれば、俺との婚約破棄をしてからにして欲しかったんだけど・・・」

「でも、アミール殿下はメーガン様の散財についていけるだけの財産をお持ちなのですか?」

「あぁ彼は、多分あの国一番の金持ちです。国王や王太子よりもね」

ユーリン王国自体はオアシスの上にあるが、かなりの国土を有している。ただ、人が生きるには過酷な土地が多いだけなのだ。

人が住まうはオアシスでだが、砂漠や岩山もユーリン王国の一部。

地下資源のある場所は別とし、人が住むことができない土地を、兄弟で分けて所有管理しているのだ。

王太子が選んだのは砂漠の中に唯一出現している、泉がある土地。

砂と岩山のみの土地を、アミールは選んだ。

傍から見れば過酷な何もない土地を受け継いだアミールが損をしているように見える。

だが、そんな事で落ち込むような彼ではない。元々、学者肌だった彼は、岩山を徹底的に調査。

そして、その岩山は貴重な鉱石が眠る宝の山であることが分かったのだ。

鉱山の持ち主が同じ学園に留学してくることを聞き、レナードがアミールに接触したのが二人の馴れ初めだ。


「まぁ・・鉱山を」

「えぇ。クレメント侯爵ご夫妻とセシリア様に差し上げた宝石も彼の鉱山で採掘されたものなのです」

宝物の様に、肌身離さず着けているネックレス。驚いたようにセシリアはその宝石(いし)を指で撫でた。

「俺とは優先的に取引してくれるし、珍しいものが出たらすぐに連絡をくれるので、採掘場のすぐ傍に作業員達の宿泊所を建ててしまいましたよ」

アミールには会った事は無いが、二人は友人としてもビジネスパートナーとしても、良い関係を築けている事がセシリアにも良くわかった。

大切なレナードの、大切な友人。だからだろうか。アミールには幸せになってもらいたいと、心から思ってしまう。

「金はあるし宝の山もある。セシリア様が言ったようにあの国は織物も盛ん。メーガンにはぴったりの国だと思う。・・・・風土さえ合えば、ですが」

砂漠の国と聞いただけで、正直な所、セシリアですら慣れるまでに時間がかかりそうな気がする。

今現在、何の苦も無く贅沢三昧の暮らしをしているメーガンが、知らない土地に、しかも砂漠の国に行くだろうか?


「・・・・厳しい、ですわね・・・」

「俺も、そう思います」

セシリアの呟きに答える様に、レナードも首を振るのだった。




セシリアとの逢瀬から七日後、アミールがタナビ国へとやってきた。

既にアミールの本来の仕事が終わり、レナードの屋敷で二人寛いでいると、何やら騒がしい。

「何かあったのか?」

「ちょっと見てくる」

と、レナードが立ち上がった時、執事のジャンがやってきた。

「メーガン様がお見えです」

その言葉に勢いよく立ち上がったのが、アミール。

彼の目的はメーガンに会う事だったのだから。

嬉々とした表情のアミールとは正反対の、鬱々とした表情のレナード。

「アミール、会いに行く手間が省けたな」

「まったくだ!」

嬉しそうな友人にレナードは肩をすくめ、共にに部屋を出たのだった。


メーガンはまだエントランスホールにおり、何やらギャーギャー騒いでいる。

周りの使用人たちは、猛獣でも囲うかのように遠巻きにしていた。

「ティラー公爵令嬢。本日は約束していなかったと思いますが、どうされました?」

優雅に階段を下りてくるレナードに、美人台無しの表情で睨みつけるメーガン。

「約束していないと婚約者の屋敷にも来てはいけないというのかしら?」

不機嫌極まりない表情で吐き捨てる、メーガン。

「そのような事はありませんよ。ただ、留守の時に来られては、無駄足となりますでしょう」

そう言ってにっこり爽やかに笑うレナードに、メーガンはイラッとした。

ここには一秒たりとも居たくないと、レナードに一枚の封筒を渡した。

「ガーデンパーティの招待状よ!必ず参加しなさい!いいわね!必ずよっ!!」

言うだけ言って踵を返すメーガンだったが、思い出したかのように振り向いた。

「エスコートはいらないわ!現地へまっすぐ来なさいっ!」

そう叫んで、さっさと馬車に乗り込み、帰っていった。


いつもの事なので、レナードや使用人たちは小さな竜巻が去ったかのようにホッとし、それぞれの持ち場に戻る為に動き出したが、初めてメーガンの苛烈さを見たアミールは呆然としたように突っ立っている。

「アミール、大丈夫か?」

かなり刺激が強かったな・・・と、その肩に手を掛けると、はじかれたようにアミールは叫んだ。


「見つけたっ!」と。


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