届きそうで届かない
あれは10年前の事だろうか...
秋の涼しい夜風が吹いていた25時
近くにある裏山、湖での出来事。
空気は新鮮で街中では味わえない空気だった。
(すごい落ち着く。)
ひと時だが全てを忘れることができた。
そして深く深呼吸をしていると背後から
『こんな時間に珍しいね!』
振り向くとそこには天使のような美少女が立っていた。
(同い年くらいだろうか、)
背後の月に照らされまるで一輪咲く百合の様だった。
あまりにも綺麗で目を離せないでいると、
『私の顔になにかついてる?』
すると彼女はニコッと笑った
「す、すみません!」
『それにしてもここまで入ってくる人、珍しくて声掛けちゃった。』
それもそうだ。
この山奥の湖は僕以外の人を見たことがなかった。
『ここでなにしてたの?』
彼女はそう尋ねる。
先月亡くなった、幼なじみがいた。
戻ってこないと知っていても忘れられなかった。
「少し悩み事で、先月。幼なじみが亡くなりまして。」
『ご、ごめんね!悪い事聞いちゃったね、』
「いえいえ、こちらこそすみません」
正直未だにショックで立ち直れなかった
それも事故なんかではなく自殺ということだった。
最後に一言LINEがきていた。
(ごめんね。)
そう、平然な日々を。極普通の高校生活を送っていた
だが全てその日から変わってしまった。
とにかく辛い。
失って気づく事。気づけば泣いてばかりだった。
人生、将来、何も考えられなくなり気づけばしばらく
部屋から出なかった。
僕は気づけば質問していた。
「あなたも同じく悩み事ですか」
『.....』
『自殺』
一瞬頭が真っ白になった。
「!!」
先月の出来事がフラッシュバックしてきた。
もぬけの殻になった。遺体が。目の前に。
その途端目眩に襲われ気がついたら知らない部屋にいた。
(昨日の事が霞んでよく思い出せない)
『あ、起きてたんだね。大丈夫?昨日急に倒れたから、』
「すいません。ご迷惑をおかけしました、」
(いい匂い、女子の部屋?!)
だが一つだけ引っかかっている事がある。
(自殺って言ってたよな、)
そして玲香は名前を聞いてきた。
『名前なんて言うの?』
「あ、蒼真、宮野蒼真です。」
『蒼真君ね。私は玲香!!よろしくね』
「よろしくお願いします。」
ずっと頭に響いている声。
自分を抑えきれず聞いてしまった。
「なんで自殺なんてしようとしたんですか」
「絶対にいい事ないです」
なぜか。口に出た言葉。
『今すぐ楽になりたい。』
『でも結局は怖くて死ねない。馬鹿みたい、』
そうすると玲香は声を震わせながら話した。
『けど言ったとしてあなたに私の悩みがわかる?』
「す、すみませんでした」
自分には理解できなかった。
幼なじみが自殺してしまった原因もわからない。
止めれていたのではないか。
後悔に包まれていただけど。
なぜか玲香だけは、死なせたくなかった。
(自殺なんて。させたくない。なんだろうこの感情)
「明日またあの湖で25時、会えますか。」
『いいけど、』
「ありがとうございました、ご迷惑をおかけしました。」
『気にしないで』
最初は自殺しようとしている人には思えなかった。
そしてベッドに入ると気を失うように寝てしまっていた。
「やば!!今何時!!」
時計を見ると24時50分だった。
無我夢中で夜の街を駆け抜けた
虫の音色と共に心地よい夜風。
森の中に入り到着すると。
するとそこには...
下半身湖に浸かっている玲香がいた。
深場まで歩いていっている途中だった。
「れ、玲香さん?!」
玲香は小さな声で呟いた
『やっぱり死ねないや。駄目だな私、』
驚きを隠せなかった。
色んな感情が蠢く中、真っ先に湖に飛び込んだ。
まだ浅い所でよかったと安心するも。
咄嗟に声が出てしまった。
「無理に死ぬ必要は無いと思います」
『なんで?もう私は生きてる意味がないの。無駄なの。』
「無駄なんかじゃありません」
(無駄になんてさせない)
なぜか決意が固まったような気がした。
なぜかここで止めなきゃ行けないと感じた。
「僕があなたの生きる意味になります」
「僕はその他界した幼なじみ。いえ、好きな人だった」
「同じような道を辿って欲しくないんです」
『あなたになにがわかるの!!!!』
怒りと悲しみが入り交じっている
「本当に生きる意味を無くしたんですか」
「俺にはそう思えませんでした」
少し強気で問いかけてしまった。
すると玲香が話し始めた。
『蒼真君は優しいね。なんで私なんかの事...』
とても悲しい表情だった。今でも覚えている。
『本当はね私もう短いんだ。』
『決して長くはないと言われた。』
その途端僕は何も考えれなくなってしまった。
なぜか悲しみの感情だけが脇溢れてくる。
『でね、お母さんは一昨年他界しちゃって。』
『ずっと大好きだったお母さんが忘れられない。』
『けどしっかりして行かなきゃと思ってたの。』
『でも上手くは行かなかった。』
苦しい表情を浮かべつつ続きを話してくれた。
『この湖。お母さんとよく来てたんだ』
『だからここで最後にしたいと思ってたの。』
今にも胸が張り裂けそうな気持ちになっていた。
助けてあげたい。何かできることはないのかと。
必死に考えていた。
『そして蒼真君がいてびっくりしちゃった』
『あんまり男の子と喋った事もないし。』
『でも、蒼真君の表情が鏡の私と似ていた』
「…」
そうして玲香がため息をつくと
「短い命。俺にくれませんか」
『!!』
そうすると玲香は涙を流し始めた
「あ、すいません。そんなの嫌ですよね」
『嬉し泣きだから』
そして玲香は優しく微笑んだ。
そうして俺と玲香の。物語が始まった...