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図書館へ行こう②

「図書館に来るなんて何年振りだろう……」


 近所にある図書館にまで来た。

 俺は本をあまり読むタイプの人間では無い、しかし今回ばかりはここで情報収集を行いたいと思ってやってきた。


「おお、これは!」

「コーデリア、静かにするんだぞ。いつもみたいに大きな声で騒がないように」

「トモヤ様! 私がいつ大声をあげたというのだ!」

「いま」


 コーデリアは顔を赤らめた。自分の声の大きさに少し気が付いたらしい。こういうところは素直に可愛いと思える。

 自宅ならいくら大声をあげても構わないがさすがに図書館でいつもの調子はまずい。先手を打っておいて正解だったかもしれない。


 俺たちは図書館へ足を踏み入れ、目的の本を手分けして探す。手分けをすると言っても顔所は日本語が読めない。そのため手あたり次第、本を手に取りパラパラとめくっているだけだ。

 目当ての区画はすぐに見つかった。


「ここか」

「この本全部! こ、これ全部……そうなのか?」


 彼女が精一杯の小さな声で俺に話しかけてくる。必死に大きな声を抑えているのが可愛らしい。

 区画には何冊もの本が並んでおり、とりあえず何冊か手に取り俺たちは読書スペースを見つけ隣同士で椅子に座る。

 俺は本をテーブルの上に置いて彼女に話しかけた。


「コーデリア、ガガルンの茎の事をもう一度教えてほしい。そしてこの本の中からそのガガルンに似た花を見つけるんだ」


 植物の百科事典、世界の花、植物大全、いくつもの本が俺たちの前に置いてある。この中からガガルンの花を見つける、それがここに来た目的だ。


「ガガルンの茎は黄色いのです」

「茎が黄色い……特徴的だね、花びらや葉っぱは?」

「花びらは赤く、葉っぱは他の植物と変わりません、緑色です」

「黄色い茎だけでも十分特徴的だけど、赤い花びらか。それならみつけやすそうだ」


 俺たちは手あたり次第、ページをめくる。本には写真付きの花が様々見られる。これなら日本語は読めなくても彼女でもガガルンの茎を探す事が出来る。


「コーデリア、大きさはどれぐらい?」

「これぐらいです」


 彼女が親指と人差し指で長さを示す、20cmほどの長さ。野草で言えばタンポポぐらいか。

 俺は本と同時にスマートフォンで黄色い茎の花を検索してみる。意外な事に黄色い茎の植物は多かった。しかしそれに該当し赤い花びらをつける植物は見つからない。

 俺はスマートフォンで黄色い茎の花の名前を探し、百科事典でその花のページを開きコーデリアに見せる。


「これか?」

「うーん、似ていますが違います」


 やはりそう簡単には見つからないらしい。こうなれば、手あたり次第やっていくしかない。


「これか?」

「違います」

「これは?」

「ちょっと違いますね」

「こっちは?」

「違います、そもそも黄色くありません」

「なら、こっちは?」

「いや、それもう別の植物です」


 俺はも途中からやけくそになって、全然関係ない植物まで彼女に見せていた。


 ガガルンの茎を探しはじめて約二時間が経過し、この図書館にある植物関連の本にはすべて目を通した。結果、ガガルンの茎に似た植物を発見する事は出来なかった。


「うーん、やっぱり無いのかな……。話を聞いている限りロスガレスとこっちじゃそう違いは無いはずなんだが……」


 俺は最後の本を閉じた。

 隣で必死に植物の写真を見ていたコーデリアはかなり疲れたようで大きな目で何度も瞬きを繰り返していた。


「大丈夫かい?」

「あ、はい。でもちょっと目が疲れました」

「コーデリアは普段本とか読まなかったの?」

「読まなくはありませんが、私の家は騎士の家系なので、本を読むのは剣の稽古の合間にある座学の時ぐらいです。父や兄はよく読んでいましたが私はどうも文字が苦手で……。一般教養とかも隙を見つけて抜け出したりしてました。だって文字が読めても魔族には勝てません! なのでトゥーリア語は半分ぐらいしか書けません……えへ」


 何が『えへ』だ。

 日本語変換が上手くいっていないから奇行に走るのかとも思っていたが、そうではない。この子の脳みそは食事への欲望と筋肉で出来ているのかもしれない。


「いっぱい脳みそ使ったので、おなかすきやした」


 コーデリアはアホな表情を浮かべていった。違う、お前は脳みそを使っていない。

 ただ俺が出す本の写真を見て、『違う』と答えただけだ。とはいえ、言語化がまた下手になっても困るのでこれ以上空腹にさせる訳にはいかない。

 この図書館での収穫は無かったし、近々もう少し大きい図書館へ行くとしよう。


「お昼はなにたべますぅ? 唐揚げでもいいですよぉ」


 一昨日も唐揚げを食べたばかりじゃないか、こいつの脳みそは鶏肉で出来ているのか。


「とりあえず、ここを出てイオンに行こうか」

「はぁい」


 一応、必死に大きな声を抑えていた彼女。図書館を出るなり急に大きな声を上げた。


「ああああああああああああ! 声を小さくしていたので、ストレスで胃に穴が空きそうでした! それにお腹が空きすぎて、ポンポコプーです!」


 この脳みそポンポコプーめ。何を言っているのか正直わからないぞ。第一あの程度でストレスだと、こっちの胃に穴が空くわ。


 図書館を後にした俺たちは近所のイオンに出向き、簡単に夕飯の食材を購入し、その足でマクドナルドへも行きハンバーガーのセットを買って家に帰った。


「うま! うま! ラリララ! ラリララ!」


 初めて食べるハンバーガーに今日も反応が面白い。


「日本に来られて私は幸せ者だぁ」


 コーデリアが本当にうれしそうに笑う、今日彼女の魔力は結局戻る事も止まる事も無かった。また枯渇した際には言語化に支障を来す。それにまた魔族が日本へ来る可能性も捨てきれない。彼女の魔力補充は俺にとっても必要不可欠なのだ。

 明日も彼女の魔力を抑えるために色々で策を練ろう。


 ところで、ポンポコプーって何。


この度はお読み頂き、本当にありがとうございますm(*_ _)m


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またレビュー、ご感想などありましたらこちらも合わせてお願い致します


皆様が面白いと思える物語に仕上げて参りますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。

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