1話 Prologue ~深き夜の森にて~
????「ソラ?聞こえる?聞こえてる?オレは、君を愛してるよ」
????「芽衣ちゃん。ねぇ、芽衣ちゃん。これ落としたよ?」
僕の名前は、朝霧 境
今、僕はとても困っていた。
知らない場所で、道に迷ってしまったからだ。
今、僕がいる場所は…どこかの森だろうか?
自分の時計を確認するも何故か止まっており、使い物にならない。
この漆黒に染まる深い森の中は静寂に包まれており。
僕の、土と落ち葉を踏みしめる音だけが、耳に伝わってくる。
それ以外の音は、何もなかった。
鳥の鳴き声も、虫の鳴き声すらも聞こえてはこない。
僕は、今何処を歩いているのだろう?
辺りを見渡す限り
樹で囲まれている。
360度何処を見渡しても、それしかない。
ダメもとで人影を探すが、やっぱりだめで。
僕は、その場に座り込んでしまった。
これって、遭難ってやつだよね?
そう判断した途端、僕は急に怖くなってきた。
この場所が山なのなら、下へ下へと向かえば、この森から出られるよね?
しかし、今居るこの場所の地面は平面であり、この場所は、本当に山なのか?
とても不安になる。
そんな心配をしている僕の身体を、山の冷たい北風が隅々まで冷やしていく。
寒い 怖い 不安
この森は、とても静かだ。
だから僕の心臓の音が、とても大きく感じた。
恐怖心による心拍数上昇も大きかったが。
再び、ふと時計を確認すると、そこには、21:30と表示されていた。
暗くて、寒くて、静かな。
そんな夜の森に僕一人。
誰か、誰でもいいから。
僕を見つけてこの森から出してほしい。
知らぬ間に、僕の目からは大粒の涙が流れていた。
泣くんじゃない!僕は、男だろ!
明日、日が昇ればきっと、この森から出られる!
一人はとても寂しくて、心細い。
怖かった 不安だった 早くこの森から出たかったのだ。
でもその気持ちが溢れて暴走しないように、僕は一生懸命に心を落ち着かせる。
パニックになってしまって、我を失ってしまったら
それが一番危険だから。
今日は、近くにある岩の影に身を潜めて
明日は、脱出できる道を探そう。
前向きに考えることにしたが
それでも、怖いものは怖い。
絶対に、不安が消えることは無い。
岩の影の柔らかい土を見つけ、その夜はその土のベッドで眠りについた。
暖かいベッドがとても恋しいと、心の底から思っていた。
1人っきりは、とても寂しい。