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Twilight Fantasy ~project valfian~  作者: Ren
1章 トワイライトナイトメア
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1話 Prologue ~深き夜の森にて~

????「ソラ?聞こえる?聞こえてる?オレは、君を愛してるよ」


????「芽衣ちゃん。ねぇ、芽衣ちゃん。これ落としたよ?」


僕の名前は朝霧 境。

今、僕はとても重大な困難に直面してしまっていた。

この状況をシンプルに言い表すのならそう、迷子だ。

僕は今知らない場所に居る。

そして、その様な場所で道に迷うという愚行をしてしまったのだ。

僕は手掛かりを求めて周囲を見渡す。

しかし残念な事に、僕の目に飛び込んでくる視覚情報は深い森。

ただそれだけだったのだ。


朝霧 境「くそ、今何時だ?」


空を見れば夜だと分かる。

時間が気になった為自分の腕に付けられている腕時計を確認するが、不幸な事にその針は動きを止めていた。

この腕時計は僕が初めて貰った給料で買った大切なものだったから、そのショックはそこそこ大きかった。

だが何よりショックだったのは時間が分からない事。

この静寂に包まれた漆黒の森で、場所も時間も分からないのはかなり危険だと言うのは、このような状況に疎い僕でもすぐに分かる。

こんな山奥に公衆電話などがある訳もない。

静寂の中、ひたすら僕の耳に伝わってくる音は、土と落ち葉を踏みしめる己の足音だけだ。

空気の振動はそれだけを僕の鼓膜に伝えて、その他の振動を僕に伝える事を放棄した。

せめて鳥や虫の鳴き声さえ聞こえてくれれば僕の寂しい感情は幾らかマシになったのだろうが、恐らくこの森は僕にそんな甘えを許すつもりはないのだろうと感じた。

……さっぱりだ、さっぱりわからない。

僕は一体、今どこを歩いているのだろうか?


歩き、休み、また歩き、また休む。

それを繰り返しながら、僕は時折人影という希望を願って辺りを見渡す。

人影だと勘違いしても、近づいてみるとそれが樹であると分かる。

全く、神様は何処までも意地悪だ…


ダメもとで何度も何度も神様を恨みながら人影を探すが…


もう、薄々感づいていた。

ただその事実を、僕は認めたくなかった。

それだけの話。

ただ、もう認めるしかないのだろう?

僕は今遭難していると…


朝霧 境「遭難…怖いなぁ」


遭難という事実を口に出してしまってから、その恐怖は全身を駆け巡る稲妻の様に己を震え上がらせた。

僕は1人暮らしだ、恐らく僕が家に帰らない事を心配する人は1人も居ないだろう。

可能性があるとすれば、明日連絡もせずに無断欠勤を行う僕に気が付いた同僚からの捜索願だろうか?


恐怖によって速度を上げる僕の心臓が煩い。

いつもの癖で、僕はつい何度も時計を確認してしまう。

だがその時計は案の定動いてはいない。

暗くて、寒くて、静かで時間も分からない……


はぁ、僕はそんな森の中で独りぼっちだった。

誰でもいいんだ、いっその事山に逃亡した犯罪者でもいい。

僕はただ人に会いたかった。

気付いた時には僕の眼からは大粒の涙が零れている。


朝霧 境「僕…泣いてんのか…」


己の涙にすら気が付かない…

如何やら僕の精神は限界値に達していたらしい。


朝霧 境「なんだよ…僕は男だろ…男はこんな事で泣くべきじゃない…」


誰かに語り掛けるように己を鼓舞する。

今はダメだ、暗い森ではより死の危険性を高めるだけ。

明日、明日だ…

日が昇ればきっとこの森から出る事が出来る!


人間は群れで生きる生き物だから、だから感情の一つに寂しいという感情が備わっているのだろう。

寂しいという感情が持ってくるのは孤独感だけではない。

不安と恐怖。

ただ僕が願うのは一つだけ、この森から早く出たい。

今僕が願うのはそれだけだ。


朝霧 境「焦るな、焦るな自分。泣くな、泣くな自分。」


こういう時に一番大切なのは、恐らく冷静で居る事。

焦る事は逆効果だ、それはただパニックを誘発させるだけ。

ダメだダメだ、パニックで我を忘れてしまったら、それこそが一番危険だ。

この状況には疎いがそれだけは分かる。

だから今日は取り敢えず近くの岩場に身を隠して、野生動物に見つからない様に祈ろう。

森には数多もの危険が潜んでいる。

脱出なんて早い方がいいのだ。

だから明日は、脱出できる道を探そう。


考え方だけを強引にでも前向きにした。

だがそれでも怖いモノは怖い、恐らくそれが無くなる事は無いだろう。

絶対その不安は消えないと断言できる。


取り敢えず身を隠せる場所を探した。


朝霧 境「岩陰、まあむき出しよりはマシか。」


僕は取り敢えず寝床を見つける事は出来た。

余りにも粗末な場所ではあるが、少なくとも夜を超す事は出来るだろう。

僕はこの岩陰の柔らかい土を寝床にして、ミミズやナメクジたちと一緒に夜を共にした。

只々汚く汚れた粗末な寝床…

僕はひたすらに家の温かいベッドが恋しいと、心の底からそう思った。

こんな森の中で、一人っきりはとても寂しい…



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