空上密室事件簿
高校生幼なじみの海人と春香は目が覚めると飛行船の中にいた。
「ここどこだ?」
「私も分からない。」
「俺ら、やばいところに来ちまったみたいだ。あそこ、人が倒れてるし、周りには人だかりが。」
「ホントだ。でもこれ、私達じゃどうも出来ないよ。」
「でもよぉ、何かしないと始まらないだろ。」
二人が動き出そうとしたその時、突然、船内放送が鳴り響く。放送者の指示で乗客全員がダイニングに集まった。しかし、容疑者は500人以上。
「チッ。多いなぁ……」
放送者は変声器を使って自分は怪盗Xであると名乗った。そして、彼らに30分の時間を与え、その間に犯人を見つけ出せなければ新たな犠牲者が出るとまで言い出した。
「何としてでも見つけてやる!」
「一緒に頑張ろう。」
こうして二人の謎解きが始まった。
「まず、乗客達の共通点だ。」
「これは?皆、招待状を持ってるし、暗号も書かれてる。」
「でかした。でもこれ、全員の暗号違くねぇか?」
「ホントだ…制限時間は30分だし…どうしよ?」
ここで海斗はある異変に気付く。
「この招待状、変な匂いがするぞ。あと、全部の招待状に黄色のバラが書かれてる。そういうことか!」
「え?何?」
「何で分からねぇんだよ。俺の助手、失格な。まぁいい。俺の名推理を聞きやがれ。まずは怪盗X、出てきてもらおうか。お前だろ。」
と、ある男性の手を引っ張る海斗。
それに、驚いた表情を見せる男。
「違うか?」
それに男はコクリと頷くことしかできない。
「なぜ分かったって?首元だよ。こんな真夏にネックウォーマーしてるの乗客の中でお前だけなんだよ。それに、全てはこの招待状が教えてくれた。黄色のバラの花言葉は嫉妬、友情。お前は友人との間ですれ違いがあったに違いない。違うか?」
すると彼は、全てがその通りだと認め、友人に自分の彼女を取られ、この計画を企て、どうせなら容疑者を増やせば自分に疑いの目が向かないと思ったと全てを話した。そして、彼は自分自身が犯した事を後悔していない、彼にも自分と同じ苦しみを味あわせただけだから。と続ける。
海斗は反省の様子のない彼にこう伝えた。
「どんな理由であれ、人を殺めるのはだめだ。皆、今日も必死に生きてる。お前は彼の尊い命を一瞬にして奪ったんだ。その罪をしっかり償え。」
これを聞いた怪盗Xは何も言わず頭を垂れ、警察に連行されたのであった。(終)