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52話 クローバーちゃんが見てる


「えっ、どういうことなの……?」

「えっとね……クローバーちゃん、私達のことが大好きで……」


「それで近付いてきて、ストー……それで私達のこと、見守ってるみたいなんだよね……」



 マリィちゃんが疑問を介するが、私は簡潔に答えることしか出来ない。

 短い間に分かったことはそれだけなのだから。



「ふぅん……それで迷っているなんて、スミレらしくないわね」

「え~?」


 私は間抜けのように返事をするが、ちょっとドキっとした。

 マリィちゃんがそんなことを言うとは、思っていなかったから。


「クローバーさんの好意を見抜いたから、あの子を捕まえたんでしょ?

 私を巻き込んでおいて、今さら怖くなったとでも言うのかしら?」


「うぅ~……」


「中途半端な態度を見せてたら、それこそ見抜かれてしまうわよ。

 しっかりしなさい、スミレ。教育係はスミレなのよ?」


「そ、そうだね~……ごめん。

 ちょっと弱気になってたかも」



 ここまで来てマリィちゃんに覚悟の差を見せ付けられてしまって、私は反省することになっていた。


「そうだよね、私が捕まえたんだよね……忘れてたよ~!」


「全く無責任なんだから……はぁ。ちゃんとあの子の心を捕まえておくのよ?

 ……しかし、そうねぇ……」


 これにはマリィちゃんも飽きれていたが、会話は思わぬ方向へと転がりだす。



「……中途半端な態度を見せているのは、むしろ私の方だったわね……。

 自分の言葉には責任を持つべきでしょう、そうよね、スミレ?」


 そう言うと、マリィちゃんはおもむろに私の身体を触りだす……!


「ほら、せっかくだから、垢擦りしてあげるわよ」

「ふぇえ~……?」


 私が正常な判断も出来ないままに、謎の垢擦りが始まったのだった……。





ゴシゴシ、ゴシゴシ……!



「ねぇスミレ、気持ち良い?」

「えっと、うん……」


 私は益体も無く返事をするせいで、全身を撫で回されていた。

 成程、マリィちゃんもこうやって大義名分が立てば積極的になれるんだという所までは思考が追いついたのだけれど、それ以上は回らない。



すりすり、すりすり……!



 マリィちゃんにそこまでやられて、初めてこれが()()()()()()()()()()()()()だという気がしてきて、意地でも嬌声は上げるものかと思い、私はなんとか抵抗を始めるのだった。



「マリィちゃん、クローバーちゃんが見てるから……」

「良いのよ、クローバーさんも見たいと思ってるんでしょ?」


「いや、そうなんだけど~」

「ん? それならむしろ変じゃない?

 さっきあのまま皆でここに来ていたら、一緒に裸の付き合いが出来たハズよね?

 親睦を深めるっていう名分もあるし、隠れる理由がよく分からないわ」


「そこはほら、ええっと……わかんない……」



さわさわ、さわさわ……!



 マリィちゃんはそれでも一応私の秘部は避けていたが、腕、足、太ももから腰、お腹、脇腹、首筋……垢の出る皮膚はそれこそ全部、その両手を使って撫でくり回していく。このまま放っておくと、愛撫まで始まりかねない。


 この時、私はくすぐりに強くて助かったと思った。

 でなければ、この快楽にすぐ溺れてしまっていただろうから。



「マリィちゃん~もう良いよ~!

 ありがとう、気持ち良かったよ?」


 私はお礼を言うとともに手を絡める。

 まだ触り足りないと動こうとするマリィちゃんのスケベな手を少々強く握って、抑え込んだ。


「そう……?

 それなら良かったわ……!」


 私の拒絶の意志を感じ取ったのか、マリィちゃんはそこで垢擦りを諦めて、あとは私に肩を預けることになった。マリィちゃんは私の嫌がることは絶対にしないが、こうやって、少しずつ私の心に取り入ろうとするのだ。


(マリィちゃん、腕が上がって来たかな……?)


 そろそろ油断出来なくなってきたかもしれない。

 けど、私の中には復讐心がぽつぽつと沸いて来ていて、これを使って彼女をコントロールしていこうという気持ちになっていた。



(大義名分を手に入れたのは私も一緒……これなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことだもん。使役(テイム)が出来ないのなら、もう心の底から、全身のつま先から先までクローバーちゃんを私のことしか考えられないぐらい、籠絡する……してみせる……っ!!)


 なんだか、悩んでいたのが馬鹿らしかったとさえ思えてくる。

 当初の予定通り、クローバーちゃんを心底好きになって、愛してあげれば良かったんだ。


 そうすれば、マリィちゃんへの当てつけにもなるし……二人の仲が悪くなったりしないよね?



 私はマリィちゃんの隣で密かに復讐を誓いながら、ゆっくりと裸の休日を楽しむのであった……。


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