4話 レベル上限解放ダンジョンで起きた二つの事故
僕は視覚だけを共有した目を飛ばして、後方から彼女達を見守っていた。
ダンジョン内で、彼女達の会話が始まる。
「ねぇマリィちゃん、ここのルールってなぁに?」
「……パーティーの、仲間を誰一人として見捨てないことよ……」
「うへぇ……そっか、前言ってたのはそれなんだね?
だからマリィちゃん、養成学校であんなに浮いてたんだ……」
「……」
「わ、落ち込まないで、ね?
私たち、一蓮托生なんだよね?」
「……そうよ」
(む、何やら悲しい過去話のようだけど……麗しのマリーゴールド様に儚さが見え隠れしているではないか。僕は早くもお花を贈りたくなってきているが、今はただのカメラマンなのだ……。
クッ! 今からでもダンジョン内まで追い掛けたい衝動に駆られるッ!)
「前回はね、パーティーの男が一人、落とし穴に落ちたのよ。皆は助けようとしたんだけど、私には回転刃のトラップが迫っていて……逃げるしか無かったの。
今思えば最悪の選択だったわ。それを皆は仲間を見捨てたんだとみなして、結局私達は不合格になった……」
「それから、養成学校では誰にも相手にされなくなったわ……」
「そのパーティーはすぐに再挑戦してクリアしていったわ。だけど私は独りぼっちになって、あとはスミレに拾われるまでは、知っての通りよ……」
彼女が一通り話すと、その過去を優しく包み込むようにスミレは抱きしめた。
「そっか~。よしよし、良い子良い子。つらかったね~!」
(あっあっ、あっ~~~~!!!!!!)
フォレストアイに涙を流す機能は無かったが、何故かもう前が見えない。
「ちょっとっ……! 遊びに来てるんじゃないのよ……!」
「大丈夫ですからね~? スミレは見捨てたりしませんよ~?」
「分かったから、離れなさいって!」
「わっ!?」
カチッ
「も~マリィちゃんのいじわる~!」
「待って、今なんか踏んだわ……」
「え……?」
ゴゴゴ……
ゴゴゴゴゴゴ……!!
(道から大きな大岩が転がってくる、ああ、あんなものボクがいれば簡単に吹き飛ばせるのに!)
「スミレ、こっち! 離れないで!」
「きゃっ!?」
彼女達は固く身を寄せ合って、洞窟の窪みへと飛び込んでいた。「あぁ! 突き離されても王子様の胸に飛び込むスミレ姫は実在したんだ! 大岩グッジョブ!!」などと僕は考えていると、二段構えのトラップが作動する!
キュイイイン……!!
「回転刃トラップ!? クソ、私はお前のせいでぇーーー!!!!」
マリーゴールドは声を荒げて、勇気を振り絞る!
刃の付いていない刃物の中に手を突っ込んで、こちらに向かって放り投げた。
(えっ……!?)
ザシュ!
(ぎゃあああああああああああああ!?!?!?)
視界が真っ赤に染まった。いや、実際に真っ二つになったのはフォレストアイだったが、僕はその場でもんどりうって幻の痛みに追われていた。
(目が、目がぁぁああぁぁ!!!)
(クッ……! 神はどうやらボクに試練をお与えになるつもりなんだ!
きっと危機を乗り越えたスミレママとマリーゴールド王子がこれから始める営みを見てはいけないという罰をお与えになったのだ……ウッ……敢えて感謝しますッ……!)
僕には血の涙を流して百合の神に懺悔をする時間が必要になり。
ダンジョン内の追跡はもうそれで諦めることになった……。
「着いたわ……ここが祝福の場よ」
「なんとかなったね~やっぱりマリィちゃんは頼りになるよ~」
「ええ。私もスミレを守れて嬉しいわ。
でも、スミレは剣士になるんだから、どちらかと言うと私のほうを守って欲しいんだけど?」
「えへへ……頑張ります~!」
「じゃあ、いよいよね……」
「うん……」
「さぁ、この台に乗って……」
――スミレ。マリーゴールド。よくここまでたどり着けましたね。
――仲間を見捨てないあなた達は、次の段階へと進むことになりました。それでは、祝福を……
どこからともなく声が聞こえてきて、レベルの上限が解放される。
きらきらと二人が乗っていた台が光に包まれて、二人の中に眠っていた潜在能力が花開いていく――
ビクッ!
ビクビクッ……!!
「あっ……♡」
「んんっ……!?」
二人はその場に膝から崩れ落ちた。
身体を支えることが出来ず、ただ身を寄せ合っている。
「なっ、なに今の……?」
「はぁっ、はぁっ……あれ、マリィちゃん、わたし……」
「え、ウソ……私、30レベルになってるんだけど……!?」
「え? マリィちゃんも……?」
「スミレも!?」
「……」
「……」
「どうなってるのよ……?」
「わかんないよ……」
「でも力がみなぎってるわ……信じられない……これが私……?」
「えへへ……今の、気持ち良かったね~……?」
「うっ、それは認めたくない……」
「マリィちゃん、とっても可愛い声出てたよ?」
「わ、忘れなさいよもう! ほら! 帰るわよ!!」




