13話 百合の為なら死ねる
「スミレ? いくらオークが弱かったからって、手加減したんじゃないわよね?」
「違うよ~」
「じゃあ体調でも悪くなったの? 怪我は……してないわよね」
「そうじゃないよ~。オーク達、戦いたくなさそうだったから……」
「っ……スミレは優しいのね。でも頼りにしてるんだから、心配させないで」
「ごめんね~……ちゃんと守らなきゃダメだよね……」
マリーゴールドはスミレの不調を疑ったが、きっとオークのキモさに気分が悪くなっただけぐらいに思っていた。実際オーク達は良い的で、これでもかというぐらい魔法を叩き込んだものだが、スミレは至近距離で剣を振るったのだ。もしかしたら臭いがヤバかったとか、色々あったのかもしれない。
「まぁこれで賭けは私の勝ちね。倒したのは36匹よ」
「えぇ~、ちょっとずるい気もするけど、しょうがないかぁ~……」
「じゃあ、えーと……そうね……
私は頑張って疲れたから……」
「おんぶ、してくれないかしら……?」
「え~? まぁそれぐらいなら、良いけど……」
「それじゃ、遠慮なく……!」
「にゃふっ」
「魔獣が出たら、私が魔法で倒すから、よろしく♡」
「マリィちゃん軽いよ~
お姉さんちゃんと食べてるか心配だよ~?」
「え、私より年上だったの? スミレは後から養成学校に入って来たわよね?」
「そうでした……。教室の隅で一人寂しくご飯を食べている先輩を見て、声を掛けた時のやさぐれた態度があまりにも子供だったから、」
「あーあー!!
それは聞きたくなーーい!!」
「あの時孤立していたマリィちゃんを見ちゃって、意地でも助けなきゃって思ったから、今があるんだよ~。「私に関わらないで!」、って噛みついた猛犬のマリィちゃんを時間をかけて慰めてあげたのは、どこのお姉さんなのかな~?」
「み、認めないわ……あの出来事があっても、年上は私なんだから、スミレお姉ちゃんなんて呼べるわけないじゃない……!」
「あっ、今スミレお姉ちゃんって」
「言ってないわよっっ!!」
そうして彼女達は一時の姉妹となって二人羽織のまま、ベルナールの丘に向けて歩いて行った。
彼女達が去った後。
「被害状況は?」
「43名が重症。脱落者は居ません。
みな、一撃を受けた時点で動かなかったのが功を奏したようです」
「オレは……マリーゴールド様の火炎魔法で焼き豚になって死にたかった……っ!」
「スミレ様にお斬りになって頂いたこの傷を抱えたまま死ぬから、触らないでくれ……」
「あぁ……姿を見るまで、最後まで疑っていたが、本当にオレは愚かだった。
クローバー様の言っていたことは本当だったんだ……!」
「お前ら、少し静かにしろ……確かにこの上ない幸福が訪れたのは分かるが……」
「うぅ……この世に女神は二人いたんだ。オレはあの子たちを犯すなんて言ってしまった。今は後悔しかない。願わくばあの子たちの子供に生まれ変わりたい……」
オーク達の感想戦は皆それぞれが感謝に満ち溢れたものだったが、次に投げかけられた言葉で一気に流れが変わり、爆発することになった。
「それにしてもスミマリは余りにも尊かったな。スミレ様の包容力を見たかよ?」
「「「 は? 」」」
「完全にマリスミだったよな? マリーゴールド様はずっと彼女をリードしてたじゃねえか。彼女達の何を見てたんだ?」
「「「 は? 」」」
「……」
「……」
「いやおかしいだろ。スミレ様はホエールドッグを倒した時、御自ら抱き付いてただろ? スミレ攻めなのは確定的に明らかじゃねえか」
「マリーゴールド様に魔法をかけて貰ってないからそんなことが言えるんだよ。ほら周りを見ろ、どうやらお前らのほうが少数派みたいだぞ?」
「何だよそれ。ただのマゾ豚なのを露呈してるだけじゃねえか。
性欲だけで彼女達を見てるんじゃないか、んん?」
「え? それの何が悪いの?
オークが性欲捨てて人族にときめく訳ねーだろ」
「……」
「……」
代表で話していた二匹のオークのやり取りに、さらに別の二匹が乱入する!
「おい待てよ。オレはマリスミ派だけどそれは聞き捨てならねえぞ。
百合をオカズにしたらぶっ殺すぞ?」
「あ、待ってくれ。オレはスミマリだけど、彼女が剣を振った時、朝露と夜香の匂いが同時にフワっと来たんだ。あの瞬間、オレは軽く逝ったね。だからスミレ様はオレが貰っていいよな?」
「ふざけんなテメー!! 百合の中に入ろうとすんじゃねー!!
ブッころっしゃぁあああああああああ!!!!!!」
「あぁん!? やんのかコラ?
やんのかぁああああああああああああ!?!?!?」
スミマリ親衛隊とマリスミ家のエージェントはどちらも神格化派と俺の嫁派で内部分裂してしまい、四つ巴の大乱闘が勃発し、多くの血が流れたのだが……豚族達の話を語るのはここまでにしておこう――……




