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1話 ボクの生き甲斐

 

ザッ――!



「やった! 今ので7レベルに上がったよ!」

「ようやくねー。あと3レベルよ、スミレ」


「付き合わせてごめんね~? マリィちゃん」

「二人とも10レベルにならないと一緒に受けられないでしょ、レベル上限解放クエスト。

 もう! これ話すの何度目よ?」


「えへへ……じゃあまだまだかかりそうだけど、最後までお願いしてもいーい?」

「私はスミレが居ないと、ずっと10レベルのままなんだからね……」



 二人は手を取り合って喜んでいて、僕はその光景を遠くの茂みから眺めていた。

 彼女達を紹介させてほしい。



 黄金色の髪をした女の子は、マリーゴールドだ。


 太陽の日差しと言わんばかりの見た目の彼女だが、どちらかというとその内に情熱を宿した美少女だ。背筋が伸び、どこか高貴な家の出自を思わせる佇まいは凛としていて、狩りを先導する先輩としての立ち振る舞いは姫をエスコートするかのごとく丁寧であり、言葉が不器用なだけの王子様であることは疑いようもない。でなければ、レベル上限に達しているのに他人の狩りなど手伝いはしないだろう。



 紫色の髪をした女の子は、スミレだ。


 間違いなく天使だ。

 全体的に線が細くて、華奢だけど清楚な雰囲気を纏っていて、控えめに表現するならば女神の一柱と言っても差し支えない。お顔の周りはくるんとした髪を下げ、睫毛も長く、僕はオレンジ色のおめめに吸い込まれそうになっている。そして今、レベルが上がったことで可憐さのステータスも上がったのだろう。でなければ、彼女の御姿にこんなにも神々しさを感じることはないだろう。



「ほら、いつまでも抱き付いてるんじゃないの。

 あとベアラビット200匹は倒すんだからね」

「マリィ~ちょっとぐらい休ませてよ~~」


「もう! 帰ってから相手してあげるから!」

「……はぁ~い♡」



 じゃれついている彼女達に今からお花を贈ろうと思うから、もし一緒に贈りたい人がいたら言ってくれ。


 キミも協力してくれるのかい? 良いだろう、手伝ってくれ。


 僕はスキル【森羅万象】を発動する。



ぱぁぁぁあああ……っ!



 抱き合っている彼女達の背中に、白い百合の花が咲いていく。

 さりげなく、そっとだ。決して気付かれてはならない。

 僕も、花たちも、あくまで風景でなければならないからだ。


 僕のスキルによって彼女達は背に百合を背負い、一つの崇敬画が完成した。


 この景色を写真に収めることが出来ないのが非常に残念である。



「あぁ、今日もいいことしたなあ……」


 これが僕の生き甲斐なのである。





 今まで僕は、何のために生まれたのかずっと分からなかった。


 生まれながらにして強く、強力な加護を戴き、人生はずいぶんと楽勝モードだったけど、その存在理由は今まで見つかることはなかった。


 だが、ついに天啓を得たのだ。


 彼(・)女(・)た(・)ち(・)を(・)見(・)守(・)ら(・)ね(・)ば(・)。


 僕はただ、その単純な動機だけを抱いて、彼女達を遠くから眺めていたのだった。




(スキル【気配遮断】を上書き……あぁ、もう、じれったいな……!

 どうにかバレないように手伝えないかな……?)


 スミレ達はまた兎を追い回す狩りを再開していたが、この分だと3日はかかってしまいそうな感じだった。分をわきまえて堅実に戦っている彼女達が正しいのは分かっているが、ここはなんとか手伝ってあげたい……。


(そうだ……僕がサーヴァントを生み出して、彼女達に倒してもらおう!)


 名案だ。こちらが反撃しないと分かれば、彼女達は時間をかけてでも倒してくれるだろう。

 僕は早速スキルを発動し、植物で編んだ魔導制御の眷属(サーヴァント)を作り出した。


「よし、行け!」


 僕はサーヴァントを遠隔で操り、彼女達の前へとゆっくりと歩かせていった。




「あ、ごめんなさい、ベアラビット逃がしちゃいました……」

「なにやってるのよスミレ……

 もう、遊んでるんじゃ……ない……んだから……??」


「どうしたの?」

「う、うそ……あ、アレっ……!」


 彼女達の視線の先には、緑の人型人形が立っていた。



「な、なんでこんな街の近くにシャドウエルヴスが……!?」

「シャドーエルブス?」


「最低でも80レベルのモンスターよ!?

 うっ……敵(かな)うわけないわ……」

「わ、わ、たいへん……」


「な、なんとか逃げなきゃ。スミレ、走れる?」

「う、うん。足はまだ動きそうかも……」


「……だったら、私が魔法を撃つわ。

 そうしたら、一斉に街に向けて走るのよ……立ち止まったら、殺されるわ……!」

「わ、分かった……!」



 僕の思惑通り、マリーゴールドが攻撃を開始する。



「……集(つど)え、炎(ほのお)! 獣(けもの)の奔流(ほんりゅう)、二対(につい)の双牙(そうが)!」


 【炎槍】(ファイアーランス)!!



 二本の槍が、炎を纏い、弧を描いて飛んでいく。

 それと同時に、彼女達は動いた。


「今よ! ……逃げて、スミレっ……!

 逃げてっ……!!」


 マリーゴールドは叫びながらスミレと一緒になって、後ろも振り返らずに逃げていく。

 そうして、あっという間に彼女達は目の届かない所まで行ってしまった。



 後には炎の槍を二本受けた植物人形と、僕だけが残されていた。


「あっ、しまった……驚かせちゃったみたい……」


 眷属を倒してもらう予定だったが、当然レベルの低い彼女達の攻撃ではそこまでの威力も無く、魔導人形はその自身の抵抗力で既に火を弱めていっている。作戦は失敗だった。


「彼女達を追い掛けないと。サーヴァントはちゃんと燃やしとこう……」


 僕は新たにスキルで枯れ葉や植物を積み上げて簡易的なお焚き台を作り、人形を供養してからその場を立ち去った。




 その頃。


「はぁっ、はぁっ……」

「な、なんとか街まで、逃げて来れたわね……」


「そ、それにしてもマリィちゃん、魔法、すごかったね~……」

「あ、当たり前じゃない……!

 私はエトワール王国に名を馳せる魔女、マリーゴールドになるのよ!」


「えへへ……やっぱり格好良いよね~……マリィちゃ、」



ビクビクッ!


「スミレ? どうしたの?」


ゾワゾワッ……!



「い、今のなに?

 身体がぞくってしたわ……スミレ?」

「マリィちゃん、い、いま……」


「今、レベルがいきなり10に上がった……」



一つ確認を取らせてもらう。

ここから先に進めば、評価の星を押すことが出来るはずだ。


君たちは、この小説に対して

星評価を付けてくれてもいいし

熟考して付けなくてもいい。


それとも、君たちはすでに

星5評価済みの

準備の良い読者かもしれない。



だが、この先に進むのはおススメ出来ない。

何故なら、百合とは尊いモノだからだ。


君たちはきっと、百合に挟まれることに

勝手に期待して

その願いが叶わぬことに

裏切られたと感じてしまうかもしれない。


だから覚悟の出来た者だけ

夢女子となって、この小説のページをめくりたまえ。

百合はその一歩から始まるのだ!



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スミレとマリーゴールド。

君もスミマリちゃんを応援しよう!
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