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第四十八話 接僧ミソジ⑦

 誰一人、攻撃魔法を使えない。

 そんな衝撃の事実が、即席パーティーを襲う。


「こんな時に、ハルイチ君がいてくれたら……」


「どうする? このまま時間を稼いで奴の自滅を待つか?」


「それしかないね~、待ってれば、うちのハルイチ君とハヤカちゃんが追い付いてくると思うし~」


 タロウがそう言うと、シャドーストーカーの触手のスピードが急に上がった。


「うおっ、あぶな!」

 タロウは、首を撥ね飛ばさんとする触手の一撃をかろうじて躱した。


「大丈夫か!? っ! こっちの槍も速く、強くなってやがる!」

 槍の勢いを、手甲が上手く捌ききれずにタチバナの肩や脇腹を抉る。


「ちョ、こいつどうなって─」

 ジローが、タチバナに気を取られた瞬間、触手の一本が彼の腹部に直撃した。小さなうめき声をあげつつ、瞬時にバックステップを踏んで威力を軽減させた。


「どういうことだ、時間が経つにつれ、どんどん強くなってる……?」

 タロウは、左手に呪いの魔神剣を握ると、両手で数の増えた触手を捌き出した。


 俺は一体、何を見せられているんだ…。

 宝生は、仮野の身体を支えながら、バトルものの映画のワンシーンの様な光景を見て呆然としていた。


 あのスーツの上に鎧を着た珍妙な男には見覚えがあった。そうだ、狩り場で見た三人組の一人だ。あまりに怪しい出で立ちだったから、思わず逃げ出してしまったが。


「先生……」

 仮野が、か細い声を出した。


「仮野さん! 気がついた? しんどいかも知れないけど、動けるなら今のうちにここから逃げるよ!」

 宝生は、仮野をお姫様抱っこの体で抱き上げる。


「先生、戦ってください」

 仮野の予想外の言葉に、一瞬固まると、


「な、何を言ってるんだ? あんなバケモノ達に付き合う必要なんかないぞ? 君は何度も死にかけて、俺は医院を燃やされたんだ……」


 そう言って、外に向かおうとする宝生の腕を服の上からしっかりと掴むと、仮野は苦戦しているタロウ達三人を震える手で指差した。


「あいつに、今勝てるのは先生しか…いないっすよ……」


「お、俺が? あんなのに勝てるわけないだろう?」


「勝てますよ、だって、見えてるんでしょ? 視界の中に色んな文字とか数字が……」


「何でその事を……!? 君はこれが何かわかるのか?   さっきから出てきて困ってるんだ! どうやったら消せる?」

 思わず仮野の身体を揺さぶってしまう。


「先生、落ち着いてくださいよー」


「あ、あぁ……すまん……」


「簡単に言うと、先生は、ゲームに出てくる【僧侶】なんすよ。そんでもって、あいつを倒せる魔法が使えるんす」


「ゲームって、あれか? テレビの前に座ってピコピコやるやつか?」


「いったいいつの時代の言い回しなんすか…って、まさか先生……まったくゲームをやったことないんすか?」


「あ、あぁ……、昔からそういうのに興味がなくてな…」


「この修羅場の中、まさかの知識ゼロの人に端的に教えないといけないとか……まさに無理ゲーっす……」

 仮野の顔に明らかに絶望の色が浮かんだ。


「とりあえず、もう立てるから大丈夫っす」


「な、なんか…すまん…」

 そう言うと、仮野を優しく立たせた。

 彼女の身体にあった傷やダメージは、ほぼほぼ回復していた。それは、宝生の回復魔法のおかげなのだが、当の本人はいまいちピンと来ていなかった。


「えーっと、とりあえず視界の中に【まほう】って書いてあるとこないっすか?」


「お、あ、これ?」

 宝生は見えない空間を指差した。


「あー、それ先生にしか見えてないから指差されてもわかんないっすよ……、ぷっ…」

 焦点のあっていない真顔の宝生が、へっぴり腰で恐る恐る何もない空間を指差している光景が、あまりに面白すぎて思わず噴き出す。


「おい、今笑っただろ? こっちは真剣なんだぞ!」


「あー、すんませんすんません…、ぷっ、そこにあるんすね? じゃあ、そこを強く意識してみてください」


「意識って言われても…」

 そう言うと、宝生は【まほう】のコマンドが出ているであろう箇所を睨み付けた。


「おい! 何か開いて文字がいっぱい出てきたぞ! ルナオ? ルナオクヨ…ってさっき言わされたやつか、何なんだこれ?」

 宝生が、仮野を見ると、腹を抱えて笑い転げている。


「ひひひひ、もう無理、あの顔ヤバいっす、ヤバいっす、ぶはははは、なんで寄り目、なんで寄り目なんすか!」

 集中するあまり寄り目になっていたらしい。


「い、今はそんなことどうでもいいだろう! それでこれからどうしたらいい?」

 少し顔が赤い宝生は、ごまかすように大きな声を出した。


「はぁ、はぁ、久しぶりに笑い死ぬかと……、いや、すんません、えーっと【メキヨ】って魔法ないっすか?」


「メ…、メ…、お、あった! これか?」

 また寄り目になりながらも、お目当ての魔法を探し当てたようで、何もない空間を指差す。


「せ……先生…、まさかの合わせ技はやめてください……、寄り目と指差しって……」

 顔が爆発したかのような音を立てて、仮野は爆笑する。


「何か……、あそこ盛り上がってるネ」

 ジローは、攻撃を止めて回避行動に専念していた。それでも、身体のあちこちにかすり傷をつけられていた。


「あのおっさんは、何者?」

 タロウは、しれっとタチバナの後ろに隠れて攻撃をやり過ごしていた。


「あー、あいつは、お前らの仲間になるはずの【僧侶】だ!」

 タチバナは両手で急所をガードし、【ぼうぎょ】を使って、捌くよりダメージを極力減らす方法へシフトさせていた。


「【僧侶】……、ってことは見るからにあいつに効きそうな魔法が使えるかもってことかー」

 タロウは、何か思い付いた様子でタチバナの背後から飛び出した。


「お、おい、危ないぞ!」

 当然、シャドーストーカーの攻撃の矛先はタロウに向いた。


 タロウは逃げ出した!


 ……しかし、まものにまわりこまれてしまった!


 タロウは、タチバナとジローからシャドーストーカーを引き離すように逃げ始めた。


「お、さすがあの人、気付きましたねー、じゃ、先生、私の合図で【メキヨ】を唱えてください」


「い、いや、唱えるってどうすれば……、さっきみたいに叫べばいいのか?」


「そうっすよ、コマンドで【まほう】を開いてるから使えるっすよ」


「わ、わかった…、だが、仮野さん、何でそんなことを知ってるんだ?」


 仮野は、その質問を聞くと、宝生にニヤっと笑いかけ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


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