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第十七話 下校ミソジ①

 赤色灯が回る。

 パトカー、消防車、救急車が総出で校門の前に並んでいる。

 大勢の野次馬がその後ろを取り囲んで、何が起こったのかを不思議そうにのぞきこんでいた。


 生徒、教職員などに死亡者はいなかった。

 軽いケガをしている者はいたが、それよりも精神的にパニックを起こしている者が大部分を占める。


 結局、当時校舎にいた半数ほどが、教室から出てしまいあちら側に飛ばされたらしい。

 グラウンドで体育の授業中だった教員や生徒も、もれなく向こうのグラウンドに飛ばされ、モンスターから逃げ回っていて大変だったようだ。


 タロウは、別室で待機させられていた。

 ハルイチや大北達もそれぞれ別室に分けられているらしい。


 ノックの音と共に、スーツ姿の男女数人がタロウのいる部屋に入ってきた。


「お疲れ様です。 無事に攻略できたようですね」


 サークルユニコーン社の社員だと思われるが、手慣れた様子でタロウの身体検査を行った。


「お怪我も、特になさそうです」


 一人がそう言うと、


「信じられない、無傷で【現実ゲーム化現象】を解除したのか」

「ベテランの戦士でも、こうはいかないぞ……」


 一部の社員が、驚きの声を上げている。


 眠そうな目でそれを横目に、


「今日はこのまま帰っていいんですかねぇ?」


 タロウは、欠伸をしている。


「ええ、報告は明日、本社でお願いします」


 チームのリーダーらしき女性がタロウに付き添っている。


「巻き込まれた人達ってどうなるんですか?警察とかいっぱい来ちゃってますけど……」


 校舎を出る途中、放心状態で立ち尽くす男子生徒や廊下でうずくまって泣いている女子生徒らを何人か見ていた。


「心配はいりません、上同士で話はついておりますので、関係者の記憶は全員操作させていただきます」


「やっぱり、そうなるよねぇ」


 入社試験の時も、自分以外の記憶は消されると言っていた、そういった技術もこの会社は持っているということだ。


「操真君の記憶はそのままなんですよね?」


「はい、山田さんの仲間になるという条件付きで記憶は保持されます」


「もし、ことわっ」


 タロウはそう言いかけて、断るという選択肢は存在していないことを悟った。


<多少の差異はあるが、ゲームのストーリー通りに進まされてる、彼が泣こうが喚こうが【魔法使い】として話は進んでいくんだろうな>


 検査も終わったということで、タロウは待機していた教室から出ることになった。


 体は、特に疲労もなかった。

 廊下を例の社員に付き添われながら歩いていく。


 目の前に、タオルを肩からかけられたハルイチが立っていた。


「どうする?一緒に来る?無理には薦めないよ、危ないから」


 タロウはすれ違いざまにそう言いながら、ハルイチの肩を軽く叩いた。


「楽しかったんです……」


「へ?」


 タロウは想像外の返事に思わず振り返った。


「この状況で不謹慎かもしれません、自分でもおかしなことを言ってると思います、でも、今まで経験したことのない何かが湧き上がってきて、すごい楽しかった」


 握りしめた両の拳をハルイチはジッと見ている。

 小刻みに震えていた。


 タロウはしばらく黙ってその様子を見ていたが、


「じゃぁ、今から俺の仲間、ね」


 そう言うと、もう振り返ることなくタロウは玄関から外に消えていった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 大小様々な大きさの白い四角い立方体が浮かんでいる空間で、黒いローブを纏ったGMゲームマスターが誰かと話をしている。


「セッティングは大変だったけど、転がり出したら面白いようにコトが進むね」


「・・・・・・」


「なに?嬉しくないの?やっと叶うんだよ?」


「何を企んでいる?」


 どこからか声がする。


「企む?そんなことしないよ、だって、いますっごく楽しいもん」


 GMは立方体の一つに腰かけ、両足をバタバタさせている。


「さて、どうだかな、お前は何を考えているのかわからない、昔から」


 すると、別の立方体の一つが不規則に歪み出し、白いドラゴンへとその姿を変えた。


「!」


 ドラゴンは、口から青白い炎を吐きながらGM目がけて襲い掛かってきた。


「ちょっとぉ」


 GMはいつの間にか、両手に黒い刀身の剣を握っていた。

 立方体から飛び降りると、間髪入れずに炎が一瞬でそれを蒸発させる。


 すぐに、左手に持つ剣を逆手に持ち替え、体を回転させると続けて繰り出されたドラゴンの爪を二本の剣で弾き返した。


 その際、生じた衝撃波であたりの立方体がぐらつく。


 ドラゴンを中心に回るように移動するGM、速くなったり遅くなったり、その速度の緩急が激しすぎてドラゴンはうまく狙いを定めきれない。


「ちょ、この能力チカラ、慣れるまでコツがいるんだってば」


 そう言いながらGMは最速の瞬間にドラゴンに向かって斬りつけた。


 ~%:@¥の攻撃!


 →ホワイトドラゴンに1のダメージ!


 二刀の刃が、硬いウロコに弾かれる。


()()()()()……か」


 まったく動揺することなく、両手から黒い剣閃の連撃を繰り出した。

 だが、ほとんどの攻撃が同じように火花をあげて弾かれている。


 ドラゴンは、爪や長く太い尾で反撃を試みるが、どれもギリギリのところでかわされた。


 GMは、かわしながらも体を器用に回転させながら攻撃の手を緩めない。

 すると突然、その中の一太刀が、いとも簡単にウロコどころか肉を深々と切り裂いた。


 喉近くに斬り込まれた一太刀は、明らかに致命傷になり得る一撃であった。


 ドラゴンは、悲鳴を上げることもなく元の立方体に戻った。


 GMは、スピードの勢いを殺すために何度か地面にステップを踏んで止まる。


「早く、このレベルまで上がってこないかなぁ……」


 深くかぶったフードのわずかに見える口元が笑っていた。


「ねぇ、そう思わない?()()()()


風邪をひいております。繰り返します、風邪をひいております(;´д`)

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