18. 料金プラン
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俺がここにいるのは何のためなのか。彼女たちはそれを教えてくれた。
早く。早く。
そんな逸る気持ちを嘲笑うように、道に溢れた車たちは無言でテールランプを光らせている。
「……これは、動きそうにないね」
運転手がそう呟いた。車は東郊通の交差点に差し掛かっている。ここを右折すれば鶴舞の駅はもうすぐそこだ。それなのに。
腕時計を見ていた吉奈が顔を上げた。
「伊東」
「そうだな。……すみません、ここで降ろしてください」
鞄から財布を取り出すと、河津が俺の手を押し止めた。
「いやいや、おかしいでしょ。わたしたちが払うから」
「だが乗せてもらったのは俺だ」
擦った揉んだしていると、いきなり自動ドアが開かれた。
「いいから早く行きなさいな」
「運転手さん、しかし、」
「今なら学割とラヴ定額でゼロ円だよ」
「ちょっと待った、後者は、」
「おばちゃんありがとう! ほら、いいからさっさと降りる!」
既に降りていた吉奈に袖を引っ張られ、俺は転がるように車外へ出た。
「ありがとうございました! ほら、行こう」
後から降りてきた河津が俺の背中を押す。左車線の車を擦り抜け、歩道へ向かう。
その途中、急ぎながらも俺はタクシーを振り返った。運転手はサムズアップで俺たちを見送っていた。
可能な限り深く頭を下げる。彼女に見えているといい。そう思いながら。
そして俺たちは駆けだした。




