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なにかと便利なこのスキル!  作者: 宮本けん
第一章 最低ランクの僕が贅沢な暮らしをするのはそんなに簡単じゃない!
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第4話 ケモ耳エルフ



「確かここら辺だったような」 

 そこには主人公という面倒くさい役職のせいで、強制イベントとかいう面倒くさい案件。それに、強制的に首を突っ込まなくてはいけない自分の運命に頭を悩ませる男がいた。


「あ。なあ、あれ見て見ろよ」

 僕が見た光景を一言で表現すると混沌(カオス)である。

 登場人物は3人。まず、2人の少女、1人は気絶しており、もう一人は、ゴーレム。3人目の登場人物に足を掴まれ、さかさまに吊るされている。

 そして、その表情は完全な無であった。


「なあ、どうやら助けは必要ないみたいだぞ」

「この光景を見て、そう結論付けた、あなたの思考回路に助けが必要です」

 おお、言ってくれるね。

「氷点の産物よ、今この時を持って再現し、盾をつらぬく矛となれ!アイススピア!」

「お前の厨二発言の方が助けが必要だろ」

「面白い事を言いますね、お礼に祐さんの体に風穴を開けてあげましょうか?」

「その笑みをやめろ!冗談に聞こえないから!!」


 と、風穴の空いた、ゴーレムの胸に目を向ける。

 それと同時に、『こうなるのだけは嫌だな』そんな思考がめぐる。


「大丈夫か?」

 気絶している方は奏に任せて、僕は無表情の女の子の方に言い寄った。

「えっと...大丈夫...?」

 なぜ疑問形?

 その女の子はフードを被り目を合わせようとしない。

 まるで、少し前の僕のようだ。


「それで、どうして無表情で吊るされていたのか、説明が欲しいんだけど」

「うん...森で、お姉ちゃんの...ダイエッ...修行に付き合っていたら...」

 どうやら、あの気絶している女の子と、この子は姉妹らしい。

「攻撃しても...再生(・・)する、ゴーレムが出て...いまに至る」

 今、再生って!?

「奏!後ろ!!」

「あんまり大声出さないで、く、だ、さ、い?」

 奏の前にゴーレムがポツンと。

「目をつぶってろ!!」

 シャイン。光の魔法でゴーレムの視力を奪う。

「逃げるぞ!」

 僕は気絶していた女の子を抱えて遠くへ逃げ出した。


「はあ、はあ」

「あの、女の子を抱えて息を荒げないでください。軽蔑けいべつしてしまいます」

「しょうがないだろ、この子重いんだよ」

「女の子に重いとか言ったら嫌われますよ」

 体重の話もそうだが、鎧だよ原因は。


「なあ、起きろーー。起きてくださ~い」

 ダメだ、微動だにしない。

「あの、何やってるんですか?」

 何とは、僕が指先を女の子の首筋に当てていることだろうか?

「フリーズ」

 久しぶりに、声に出して魔法を放つ。

「ひぃ!?」

「よし、起きたぞ」

「うっわ~」

 僕はただ単に引かれていた。


「なあ、これはいったい?」

 それは、少女のセリフだった。

 僕のセリフだと勘違いするのも、まあ、しょうがない。

 それほどまでに、彼女は男口調なのだ。

「いろいろあったんだよ」

 説明が面倒くさいから、適当にハブらかそう。


 と、そんな訳にはいかず、今先ほど説明を終えた。

「なんか、いろいろありがとな!」

「いや、お礼なら奏に言ってくれ」

「そうか、ありがと!!でさ、自己紹介するよ!」

 そういえば、名前もまだ知らなかったのか。

「私はエマ、剣士を生業としている!そして、こっちが妹のロアだ!」

「よろしく...私は...【弓使い】のスキル持ち」

『スキルって言ったら僕達のガチャスキルと同じか?』

 僕が小声で奏に耳打ちする。

「違います、言っときますが私たちが例外なんですよ」


 奏の話では、スキルというのは。

 例えば、【剣士】というスキルなら、剣術が上手くなったり、物理攻撃力が上がるなど、何かしらの効果をもたらすもので。

 それは、ステータス確認では見ることができなく、【スキルチェッカー】という特殊な魔道具を用いることで確認することができるらしい。

 そして、多くの冒険者は先ほどのエマの様に、自分の所有スキルで、自分のジョブを表すという。

 つまり、『剣士を生業にしている』とは【剣士】スキルを持っているということだ。

 今度、僕も確認してみようかな。


「僕は神楽祐、ジョブは、まあ。【便利屋】としておくよ」

 【便利屋】とは【下級魔法詠唱不要】という、弱いが、便利なスキルによって命名された僕のジョブだ。

「そうか、ユウは便利な男なのか!」

「なんか、勘違いされるように呼ぶな!」

「...じゃあ。私は、音無奏。たぶん、【魔法使い】です」

 ...【語彙ごいの無駄遣い】の間違いだろ。

 【永遠の厨二】でもいいか。

 【愛すべき病】も捨てがたい!


「でさ、エマとロアって、エルフなのか?ドワーフなのか?」

 というのも、この二人にはエルフ耳があり、加えて、ケモ耳でもある。

 つまり、パラドクス!訳が分からない!

「ハーフさ、エルフとドワーフのな!ちなみに私達は双子でもあるぜ!」

 エルフとドワーフのハーフ!?しかも双子って...全然似てねーな!

「エルフとドワーフって仲悪いんじゃないのか?」

「まあ、王族同士はそうだが、国民はそうでもないぜ。まあ、表には出さないがな」

「でも、他種族と結婚って大丈夫なんですか?」

「...お母さん、お父さん...駆け落ち」

「おお!すごいロマンチックじゃないですか!!」

 何、一人で興奮してんだ。


「ま、まあ、奏。残りの照明を置きに行こう」

「えー。もうちょっと、話したいです」

「...なんなら、手伝おうか?クエストだろ?」

 ...剣士、弓使い。...使えるかも!

「それなら、ありがとう!力を借りるよ!」

「おなか...すいた」


「ロア!援護!!」

「...」

 あれから幾度か交戦があったが、この二人の連携には、さすが双子と言わざるを得ない。

「燃えろ燃えろ!炎と踊れ!!イグニション!」

 あれから幾度か交戦があったが、この奏の言動には、さすが厨二と言わざるを得ない。


 これで最後か。

 最後の照明を置き、帰路に向かう。

「もう、空も暗くなってきたな」

「ですね」

「おなか...すいた」

 何だこの会話は!!

 いや、何が困るって、文字に起こした時のインパクトの無さだよ!!

「【本日のメタ発言】を終えたところで、エマとロア、良かったらパーティー組まないか?」

「メタなんとか、は知らないが、私は別に構わないぜ!」

「おなか...すいた」

「...たぶん、ロアも大丈夫だ!」

 ロア、こいつは、【いつでもおなかすいてるキャラ】を狙っているのか?

「ああ、じゃあ、改めてよろしく!」

「よろしくお願いします!」

「よろしくな!」

「...よろしく」


 と、まあ。僕達は、そんな風にケモ耳エルフと仲間になった。

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