表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なにかと便利なこのスキル!  作者: 宮本けん
第一章 最低ランクの僕が贅沢な暮らしをするのはそんなに簡単じゃない!
2/5

第1話 Ⅹ=1



 石造りの家々、本格的な教会。そんな、物語で多く用いられる風景。

 そこに、一人。暖かい日の光を浴びて、黄昏たそがれ...ている、男が居た。

「おかしいだろー!!!」

 そして、心からの叫び声をあげていた。

 僕なら、こういう奴には関わりたくない。

 ああ。そういえば。この男、神楽かぐらゆうは、僕そのものだった。


 自我を取り戻したところで、これからの事を考える。

 まずは、衣食住。

 その為には職に就かなくてはいけない。

 ということで...何をすればいいんだ?

 僕のこの状況は、正直言ってみなんじゃないか?

 普通に考えて、このあいだまで中学生だった人間を『はい、さよなら』で異世界に送り出しても何が出来る訳でもないだろ!


「兄ちゃん、そこに居られると邪魔なんだが」

 どうやら僕の異世界最初の会話は、この、いかついおじさんになりそうだ。

 というか、日本語でいいんだな。

「あ、すいません」

「何だい兄ちゃん?その年で迷子か?」

 違うわ!

「あの、先ほどこの街に来まして、職を探しているんです」

「おお~。そうかい、そうかい。若いもんは良いねー!」

 見た目によらず、いい人で安心した。

「そうだ、兄ちゃん!冒険者なんてどうだ?少々危険だが、興味ないか?」

 冒険者?そんな職があるのか。

「まあ、詳しくは、あそこの冒険者ギルドで聞いてくれ」

 えっと。あの、でっかい建物のことか?

「はい、ありがとうございます」

「いやいや、まあ。強気生きろよ若人わこうど!」

 いやー。どんな世界にも親切な人はいるようだ。

 人を見た目で判断しちゃだめだと、再度実感したよ。


 冒険者か...いいかもしれない。ひびき的に楽しそうだし。

 何より、厨二ちゅうに心をくすぐる。

 僕はそんなことを思いながら、重い扉を開ける。

「おお?見ねえ顔だな!」

 いや、ここは世紀末か!!

「はい。ぼ、冒険者になろうと思いまして」

「ハハハ!お前みたいな坊ちゃんが、つける職じゃねえよ!!」

「何言ってんのギルダ!ごめんね、この人お酒は入っちゃてて。冒険者になりたいのなら、受付に聞いたらいいわよ」

「あ、ありがとうございます」

 どこの世界でも優しいお姉さんタイプは素晴らしい!!


「あ、あの、冒険者になりたいんですけど」

 受付のお姉さんが美人だったからか、声が少し上ずってしまったが、そんなことはどうでもいい。

「はい、新規の登録ですね?でしたら、まず。ステータスを確認しましょう」

 話が進むのが速いな。

「この水晶に手をかざしてみてください」

「あ、はい」

 完全にお姉さんの勢いに押され、言われるがまま、水晶に手をえる。

 瞬間。水晶が回りだし紙に文字を映し出す。


「フッ。では確認してみてください」

 ん?今。お姉さんから、バカにされたような視線を感じたが...気のせいか。

 僕は、お姉さんが渡した紙に目を通す。

「あの、この数値はいいんでしょうか?」

「いえ、悪いです」

 ストレート!!

「筋力とか耐久も体力だって底辺ですね」

 ストレート!!!

「ずっと家に引きこもってたんですか?」

 ストレート!!!!

 お姉さんの言葉に、僕の心はもうボロボロです。

「...ニートだったんですか?」

 お姉さんは僕の心にとどめを刺すようだ。

「このステータスで冒険者に(笑)」

 その笑みは僕にとって、オーバーキルだった。

「あ、すみません!つい」

 何が『つい』だよ!!

「しかし、このステータスなら冒険者には、本当に向きませんし、ランクも最低レベルのDですが。それでもご登録なさいますか?」

 たしかに、冒険者は危険って言ってったしな。

 ランク?なるものがあるらしいが、それも最低レベルかよ!

 でも、ゲームみたいで楽しそうだしさ!

 他にやりたいこともないし。

「はい、お願いします!」

 この日。僕は、冒険者(笑)という職に就いた。

「そうですか!ま、まあ、ランクはクエストをこなせば上がりますし、大丈夫ですよ!」

 お姉さんは必死にフォローしてくれているが、それが一番傷つくぞ!!


「私はギルド職員のアンナです、よろしくお願いします。それでは、お名前と性別、年齢などのご記入お願いします。」

「はい」

 住所って日本でいいのか?


「出来ました」

「神楽祐さん、男性、16歳ですね」

 アンナさんはその後も、僕の個人情報を大声で復唱していった。

「ニホン?あまり聞かない地名ですね」

「あ、はい」

 『聞かない』というか無いのだから。

「そう言えば、昨日も同じ地名の人が来ましたよ」

「えっ!ほんとですか!?」

 ここで噓をつく必要もないのだが、テンプレとして、こう返しをしてみた。

 まて、まて。今はそんなこと、どうでもいい。

 日本人、つまり僕と同じ境遇きょうぐうの人物がいるのだろう、ぜひ会いたい!

 その日本人が大きい胸の、美人なお姉さんでありますように。

 そこには、一人の男子高校生。その、切な願いがあった。


「あの!その人がどこに居るか分かりますか?」

「はい、あのテーブルに座ってますよ」

 案外、近くに居たのか。

「えっと、いろいろとありがとうございました!」


 僕は、登録を一通り終わらせ、お姉さんにお礼を言い、その人のもとに向かった。

 さて、願いと言うのは簡単に打ち破られるもので、そこに居たのはロリであった。

 いや、ロリではない。ただ、一点、この一点だけを見た時、それは、何というかひらたかった。

 そこに曲線は一切無く、完全にX=1のグラフである。

 つまり、貧乳だ、そして少価値、否。少価値と言うべきだろう。

 ちなみに、胸部を除けば16歳くらいの可愛い女の子だ。


「あの、人の胸をまじまじと見て、何を思ったっか知りませんが、やめてもらえますか?」

「み、見てないよ!!」

 そうだ、僕が見たのは胸ではない、あんな平面なものを胸?笑わせるな!!

「そうですか」

「でさ、日本人だよね?」

「はい!?...はい」

 推測だが、最初の『はい!?』はビックッリした、というリアクションの『はい』、次の『はい』は日本人です。という意味の『はい』だろう。

 と、二連続の『はい』について語ったところで。

「僕も日本から来たんだ」

「神様に飛ばされて、ですか?」

「うん。...そ、そうだ!ガチャ引いた?」

 ガチャとは、神様から授かったスキルのこと。

 ちなみに、僕は【下級魔法詠唱不要】とかいう意味不明なスキルを授かった。

「はい、よくわかりませんが【呪文変換】?だったっと思います」

 何それカッコいい!

「あなたはどうでしたか?」

「ぼ、僕は【詠唱不要】だったよ」

 下級魔法(・・・・)と付けてないが噓もついてない!

 まあ、そんなことは置いておいて。


「それより、僕達、日本人じゃん」

「そうですね」

「僕、人見知りじゃん」

「そう、なんですか?」

「異世界で分からないことも多いじゃん」

「そうですね」

「30オームの抵抗に30ボルトの電圧を加えたとき、流れる電流の大きさは1アンペアじゃん!!」

「はい!?」

「仲間がいたら心強いじゃん」

「そうですね」

「僕ってハーレムエンド狙いじゃん」

「...そう、なんですか」

「それでさ、提案なんだけど。もし良かったら、パ、パーティー組まない?」

 なぜか、女の子に告白してるような、気恥ずかしい気持ちになってしまった。

 ...しかし、僕はこれまで『女の子に告白する』という機会が無かったのだ。

 つまり、そんな気持ち、知ったことじゃない!

 しかし、作者は知っている!!


 そんな僕の思考をさえぎり。

「所々、意味がわかりませんが、良いですよ!」

 僕が、脳内で『作者』とか『作者』とか、メタい事を言っている間に結論を出したらしい。


「それでは、私は、かなで音無おとなしかなでです。よろしくお願いします!」

「僕は、神楽祐!こちらこそ、よろしく」

 こうして、僕は異世界最初、および。僕の人生で数少ない、仲間(友達)というものを作ることができた。


 そして、これだけは覚えておいてほしい。

 その仲間の胸部には、曲線が一切、無い!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ