少女の一日。
とても冷たく、寒い。
なんだ..まだ死に切れてないのか。そう思うと直は物凄く悲しい気分になった。
状況確認を....ダメだ、目を開く力すら残ってない。
あぁ、眠い。体から痛みがスッと抜けていく様な変な感じだ。....情ねぇ!
自分の部下達が苦しい思いして死んでいって、その上その死体に爆弾まで仕掛けてロクな戦果もないじゃないか。このまま死んで胸はって先に死んでいった奴らに顔向けできるわけないだろ!
胸はって黄泉路を渡れないじゃないか!
動け!動けよ!!せめて目だけでも開け!せめて状況を確認して司令部に報告しなくては!!
「うぅ..あ....ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛........」
力一杯に叫び奮い立とうとしても実際は死にかけの擦れた声にもならない声しか出なかった。
畜生....ちくしょう....。
そして、倉館 直の意識はそこで途切れた。
〜〜〜
その日はとても暖かい春の日だった。
天気はとても良く、風も心地のよい、彼女にとって絶好のお散歩日和だった。
少女はとても晴れやかな気分でバケットに手づくりのサンドイッチを入れて、いつも天気にいい日に行く少女だけの秘密の場所があった。
「行ってきます!お父さん!お母さん!」
しかし、少女の言葉に反応はなく、少女はそれを当たり前かのように笑顔のままで扉を閉めた。
「フーン フーン フフフ〜ン♪」
調子の良さそうに鼻歌を交えながら町外れの丘に向かう。
街から10分ほどの距離にあるその場所は、街の住人達にも知られている有名なところなのだが、故あって誰も近寄らない。
だが、不穏な噂が立つ所だが、景色がとても綺麗という理由で、少女はその場所をひどく気に入っていた。
いつものようにその丘の1本だけ植えられている木の下に行くと、少女はいつもとは違う何かがある事に気がついた。
ボロボロの変な服を着ている男が1人仰向けに倒れているのが目に入ったのだ。
誰かな?....隣の国から逃げてきた人かな?
どこから来たのかな?
もしかしたら、あの噂と関係がある人かも?
考えれば考えるほど少女は訳が分からなくなってしまい、ついには
「もう面倒くさいし、この人が起きたら直接聞けばいっか」
と、この始末。
普段とは違う出来事が、少女が後に物凄い出来事をもたらす事などつゆ知らず、少女はサンドイッチをボロボロの男の横で食べ始めた。