プロローグ
なにか覚悟を決めて全力でやってやるとなる奴はその為に何かを犠牲にする、だから、本気で覚悟を決めれる奴なんかそうそういない。いるとすればそれは、本当に何もなくなった奴か、死ぬかもしれない状況に陥った奴の、この二種類だけだと思う。
俺、倉館 直が30になるまでに覚悟を決めた回数は2回だ。一回目は自衛隊に入隊しようと思った時、そして二回目は今だ。
鉄鉢のせいでものすごく頭が蒸れてかゆい。だが、そんなことを気にしてられるような状況じゃない。ガッーっとノイズが走る、無線機が部下達からの無線を拾ったらしい。音に続いて声が聞こえた。
「a38地点、負傷兵3名、うち1人右足切断の重傷、救援要請求む!送れ!」
「了解、送れ」
と、やりとりが聴こえる。救援要請に駆け付けたいが今はそれどころじゃない。こちらから見える敵の数は二個小隊分装甲車2台のおまけ付き。対するこちらの戦力は俺と地雷とブービートラップだけ。つまるところ圧倒的に不利な状況だ。横浜ランドマークタワーの入口付近でソレを目の当たりにしてとてつもなくにげたいという衝動に駆られる。
死んだ仲間や敵の死体にトラップは仕掛けた、対戦車地雷も設置した、ハチキュウの残弾は弾倉三つ分、銃剣は折れて使い物にならない。俺自身は....死ぬ覚悟はできた!
目標敵、撃ち方用意、静かに、敵に見つからないように照準を合わせる、敵が少しぼやけて見える。
「お前らじゃ何年経っても日本は倒せない事をゆめゆめ忘れるなよ、北のバカチョン共」
そう呟いた後、トラップが作動し手榴弾が爆発する音が聞こえた。
どうか100年後の地球では戦争の無い、子供が笑って一生を過ごせるような世界になります様に、そして、神様とかいう人類悪のいない世界に生まれ変われるなら生まれ変わりたいです。そう願った後照準を敵に合わせ直し引き金をゆっくりと引いた。
その出来事は2031年の冬の日の事だった。
〜〜〜
死ぬのは眠るのに似ている気がする。
起きるか起きないかだけの違いでそれ以外は特に違いはないんだろうと思う。
そして、目の前に仰向けで倒れているおかしな格好をしている人はどっちなんだろう?口の近くに耳を持っていき呼吸があったら生きてる、なかったら死んでる。とにかく確かめてみよう。
....耳を顔の近くまで持っていき確かめる。どうやら、このおじさんは生きているらしい。でも、何でこんなにボロボロで、こんな変な格好をしているのだろう、少し考えた後、めんどくさくなったのでこのおじさんが起きたら直接聞けばいいか。と思い、その男の横に座ってバケットからサンドイッチを出して食べ始めた。
それはさながら一部を除けば親子でピクニックに来ているかのようなとても微笑ましい光景だった。