表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

愛を届けたタラヨウ

作者: 短編皇子

※真面目に書いたつもりです。

 私は病気に成りがちだ。

 小さい頃から体が弱く、学校でも日常生活でも一人に成りがちだった。

 そんな私の身の寄り所は公園に生えていたタラヨウだった。

 タラヨウ……モチノキ科モチノキ属の常緑広葉樹、高木。

 葉に傷をつけるとその部分が黒く変色して文字が浮かび上がる。

 私はタラヨウの近くに居ると楽しかった。

 友達のいない、孤独な私にも楽しめる所があったんだって。

 タラヨウの事を知っている人達が葉に傷をつけて文字を浮かび上がらせて、交換日記の様なものをしていたからだ。

 今日は××をした。〇〇な事をした。□君と一緒だった。等、様々だった。

 極めつけはこれだ。

 僕は今日、〇を〇〇な手術をした。僕は体が弱くて楽しい事は出来ないが、ここなら楽しい。もっと一緒にお話ししよう。

 という内容だった。

 私はこの人に共感した。

 あぁ、私と同じ人がいたんだって。

 こんな世界に一人だけだと思っていた私にもついに友達が出来たんだって。

 この書き込みを発見してからいつもより多く行くようになった。

 毎日が楽しくなってきた。

 いつもは、負の感情でいっぱいだったが、この時だけは違った。

 彼の書き込みを探してそれを読み、近くの葉に返事を書く。

 それが私の日課になろうとしていたある日……事件は起こった。

 高校生になった私がいつもの様にタラヨウの木の下に居ると、数人の男が近寄ってきた。

 男達は私を囲むように構えると、リーダー格の男が私に掴みかかってきた。


「イヤッ」


 私はその手を振り払おうとジッタバッタ暴れたが意味は無かった。


「だまれ、この糞アマッ」


 その男は私の顔面を思いっきり殴ってきた。

 私はその攻撃を喰らうと腰を抜かしたような状態になってしまった。


「なんだ、もう終わりか」


「もっと抵抗しても遊びがいがあったのだけどな」


 男達はそう言うと私の服に掴みかかり破こうとして来た。

 怖い、助けて……私はなんどもそう願った。

 その時、私の目の前に彼が現れた。


「やめろ、その子を離すんだ」


 そこには、全身を純白の病衣を着た少年が立っていた。


「あぁん?何だ兄ちゃん」


「邪魔しようってなら、タダじゃ済まさんぞ」


「あぁん、あぁんあああぁん?」


 男達は彼を見て、如何にも三下のセリフを口にしていた。

「嫌がっているでしょう、そんな事はやめてあげなさい。日本国民としてどうかと思いますよ。あなた達の大和魂はその程度なのですか?」

 少年は男達に対してキッパリとものを言っていた。


「やんのかゴラァ」


 男の一人が少年に向かって飛びかかった。

 男が少年の身体に触ろうとした瞬間、稲妻が落ちたような音がして男が地に伏せた。

 少年の手にはスタンガンが握られていた。

 泡を吹きながら倒れる男を横に少年はこう告げた。


「まだやる?やるなら全力で相手するよ」


 少年は懐から謎の液体が入った注射液を取り出した。

 少年は私の方へゆっくりと歩き出した。


「うっうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 男達は全員で少年を襲った。

 少年は襲い掛かって来る男、一人一人に対してスタンガンの猛威を振るった。

 戦いは終わりを告げ、うめき声を上げながら横たわる男達と腹にナイフを刺したまま直立する少年が残った。

 少年は私の方を見るとニコッと笑いながら歩み寄ってきた。


「大丈夫だった? 君だよね僕の書き込みに答えてくれていたの」


「わっ私は、その……」


 私が何かを言いかけると少年は膝をつき私の方へと倒れた。


「良かった……君が無事なようで、最後にやり遂げられて……本当に良かった」


 彼の腹からは赤い血がドロドロと流れ出ていた。

 こんな事が起こるとは思わず私は戸惑っていた。

 すると彼は大きめのタラヨウの葉に傷をつけ始めた。


「ありがとう。今まで幸せだったよ」


 少年はそう言った。

 私は何もいう事が出来なかった。


「あっわた、私……」


「いいんだよ。何も言わなくて、君が僕の事を思っていてくれて本当にうれしかった」


 彼は弱弱しい声で私の耳元に告げて来た。


「僕ね、今日が寿命最終日なんだ。生まれてから天涯孤独で、いつも一人ぼっちだったんだ。だけど、君が僕の書き込みに答えてくれて……生き甲斐を見つけることが出来たよ。僕が天に上ったとしても君は一人じゃないよ。いつか、君に合う人に会えるって。人間のサイクルはそうなっているから。ほら、こんな僕だって今日、素敵な人に出会えたじゃないか」


 私はいつの間にか涙を流していた。


「ほら、泣かないで。僕は君の笑顔が見たいんだ」


 私は泣きながらどうしようもない不格好な笑顔を見せた。


「ありがとう」


 彼はそう言うと力が全て抜けたように、私の横で丸くなった。

 少年は満面の笑みだった。

 僕はいつまでもタラヨウの木の下で待っています

 彼はそう書き残し、天へと旅立って行った。

 タラヨウの葉にはいつまでも彼の書いた文字と思いが残り続けていた。

 いつまでも、枯れて落ちることなくいつまでも。

「誰かを護って死にたい」

この言葉を何かのアニメで聞いてから忘れられなくなりました。

人の本望の根源ってなんなんでしょうね?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ