澱
『県民健康管理ファイル』
県から送られてきたファイルが三冊。
私のものと、主人のものと、桃香のもの。
どんなすごいものなのかと思ったら、最初に二四ページほどの読み物があって、その後は全部空っぽのクリアファイル。
あ、最初の読み物も健診の記録とか、よく見れば自分で書き入れろってわけね。
なになに? ちょっとした、放射線に関する説明もある。これ、県民全員に送ったんだ……。まー、ご苦労な事ね。
まっさらなクリアファイル。
ここへ、ガラスバッジやら、ホールボディカウンター、甲状腺検査の結果を入れ込んでいく。
大人が受ける検査はあまりない。
検査を受けるのは主に子どもたち。
あまり痛い思いをしたり負担になるような検査がないのが救いかな?
最初のページはガラスバッジ検査結果。
もらっていた検査結果のお知らせをクリアファイルに入れ込む。
〇・一ミリシーベルト。
だから何よ? それの意味するところが解らないんですけど。健康影響が心配させるレベルの線量の方はいませんでした?
次のページは甲状腺検査
(A1)異常は見られませんでした。
ふう。よかった。避難しない選択をしたけど、これで異常が出たらすごく落ち込んだだろうなあ。そういえば鈴木さんとこの綾乃ちゃんはA2だったって……。まあでも、A2っていったら、再検査しなくてもいいのよね? けっこうな割合で、甲状腺癌とかあるらしいって聞くけど、単なる噂なのかしら? それともそれが真実なのかしら? 結局「被爆の影響かどうかはわからない」って言われてお終い。検査しないよりは、いいけどねえ。
そして、「基本調査」による線量推移結果のお知らせ。
うちの子が三・一一から三カ月の間での外部被爆実行線量は一・三ミリシーベルト。うわ、一般公衆の年線量限度超えてる。でも、それの意味するところがわからないんだってば?
次は立位型ホールボディーカウンター……。そしてまた、甲状腺検査……。
送られてきた検査結果を次々に透明なクリアファイルに入れ込んでいく。
いつかこの子が癌にでもなったあかつきには、この資料が何かの役に立つというのだろうか?
小説なんて呼べないようなもので、すみません。これは、私の独り言のようなものです。こういった細々としたものが、ボディーブローのように精神にダメージを与えてくるのですよねえ。(家族構成とかちょっとした結果とかは、私の家族とは多少変えてあります)