九輪目 入部
京香は、調理室の隅で古都葉と座っていた。見学が古都葉によって強引に過去3回行われたにも関わらず、京香に話しかけてくる者はいなかった。
「葵くんに抜かされちゃったかもねー」
「うるさい。別にいいでしょ」
クスクスと笑う古都葉を見て、なにか言いた気の彼女は、仕方なく葵に目をまわした。すると葵がこちらに向かって来た。
「僕、園芸部に入ることにしたよ!」
「やったぁ~!じゃあ入部届け持ってくるね?」
「ありがとう、古都葉さん」
パタパタと音を立てながら、職員室に向かって行った。
「葵は園芸とかできるの?」
ふいに隣に座っていた京香が話しかけて来た。
「ま、まぁ多少はね」
「ふーん。じゃあ私も入ろうかな」
「え?なんで?今まで見学して来てもはいんなかったのに!?」
「なによ、私が入るのがやなの!?」
「い、いや。嬉しいなぁ……って」
目を背けながら、もしかすると照れながら告げた。その言葉は暫し宙を舞ってから、京香に落ちた。
「お待たせー!入部届け持って来たよ〜!」
勢いよく入ってきた彼女は、2人を見て察した。
「入部届け2枚持って来てよかったぁ」
そのクスクスと笑う顔が、調理室にいる皆に伝染した。そして2人は真っ赤になって俯いた。