八輪目 紹介
園芸部。最初は演劇部の聞き間違いだと思った葵だが、やってることが演劇部のそれとは、大きく異っていたので、認識を正した。
「え、か、翔は普段園芸部でなにしてるの?」
「普段?普段か!ちょっとこっち来い!」
そう言われると、翔に腕を掴まれ、窓際まで連れてこられた。
「あれを見てくれ!」
指した先には、多数に置かれたプランター。そしてそこから生えている、多種多様な植物がこちらを覗いていた。
「俺が育てのもあるんだぜ!今日はそれを収穫して、料理する日だ」
「翔がこれつくったの!?すごいね!」
「へへー、すごいだろ!」
自分が育てた植物を自慢気に話しているが
「翔くん、水やりよくサボってたけどねー」
と、後ろからは古都葉が反論をよこしている。それを笑いながら返事をする姿を見て、葵は不思議に思った。
「ねぇ、翔はなんで演劇部に入ったの?」
「それは。多分親の影響かな。俺の親は自営業でレストランやってんだけど、そこで無農薬野菜作りたいって話になって。そこで俺が一役買ったわけ」
その台詞は、会ってからの数分間からの行動からは予想だにしなかった。葵は少し感動して、翔がカッコよく見えた。
「まあ、その話はさておき、お願いだから入部してくれよ!男子部員俺一人だから、土とか全部持たされるんだよ!」
一瞬でも尊敬した葵は、呆れたようにそれを撤回した。