五輪目 友達
ある日の昼休み______
「じゃあ、中庭いこ。」
「うん」
いつも通り、古都葉と京香は中庭で各自の弁当を食すつもりだった。
「ん?」
教室を出ようと思った京香が、辺りを一瞥すると、葵は自席で、一人ぼっちでお弁当を食べていた。挨拶する男子はいるものの、声は掛けてこず、また葵も声をかける勇気が無いように見えた。
「一緒に食べようって誘わないの?」
「な、なんで私が誘わなきゃいけないのよ!私は古都葉と2人っきりでいいもん」
「それは嬉しいなぁー。けど、葵くん。これじゃあ、多分あのままだよ?いいの?」
「っ、それは……」
「ほら、いってきなよ!」
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「誘ってくれてありがとう、僕、友達ってどう作ればいいのかわかんなくて……」
「小中学校では、どうしてたのよ」
「学校には、僕含めて三人しかいなくて……ほとんど近所の知り合いだったから」
そりゃそうかと、京香が納得した顔をする。
「じゃあ私達と友達になってくれるよね?」
「え?」
古都葉がふいに投げ掛けた付加疑問に、2人はキョトンとしていた。
「え……ほんとに!?」
「仕方ないわね……じゃあ、あんたのこと、これから葵って呼ばせてもらうよ」
「じゃあ僕も、京香さんと、古都葉さんって呼ぶね?」
「好きにしなさいよ」
「私は古都葉って呼び捨てでもいいよ?」
中庭には、初夏の緑々しい風が吹き抜けた。