二十九輪目 試着
雑貨店には、多少ながらも洋服が置いてある。2人はそれぞれ、お互いに似合いそうな服を選んでいた。
「ねえ葵!これなんてどうかな?」
「ぼ、私にはあんまり派手なのは……」
胸に大きなリボンのついたワンピースが、京香の手の中にある。既にフリフリの服を着ている現在の葵に、そんな風に否定されるとは思っていなかった。
「京香…ちゃんは、こんなのどう?」
葵がチョイスしたのは、黒の生地に白いラインが入ったカーディガン。
「じゃあ、2人で試着しようよ」
強引に腕をひっぱり、そのまま狭い個室に閉じ込められる。
「ちょっ!ここ狭いし!しかもカーテンだから!周りに聞こえるよ!」
「じゃあ、静かにしないとね……」
京香は葵にキスをした。唇を唇で覆いかぶせるように。その流れで腕が両側から柔らかい背中を包む。最初はジタバタしてた葵も、自然に身を任せるようになってくれた。
京香自身も、最初は多少ながらも抵抗があった。何より自分のキャラじゃないと。しかしそんな事よりも先に頭には葵が出てきてしまうのであった。
学校でも、皆から「変わったね」とよく言われる。その変化は確実に良い方向だと、確信していたから。無理に変えようとはしなかった。
「ぷはぁっ」
京香が口を離し、葵が口呼吸に戻る。
このままでは試着がままならない旨を京香に説明しようとしたが、その最中に、またキスをされてしまった。




