二十八輪目 買物
あれから一ヶ月程過ぎた。
京香は葵を、より女の子として好きになっていった。そこに背徳感は無く、心から好きと言える。そんな対象になっていった。
「ちょっ、これは恥ずかしいよ!皆見てるじゃん!」
「それが気持ち良さに変わるからっ」
今、2人は隣町の街中、メイド服で移動している。はたから見れば可愛い格好をした女子2人組。注目の的になるのは当然だった。ここはいつも京香が歩いて回る商店街。人混みこそないものの、常に誰かとすれ違う。
「よーし、もう少しで目的地だよ!」
「このスカート短いからもう少しユックリして〜」
葵のフリルが振動と風で揺れる。ショーツがチラリと見え隠れしていた。
※※※
商店街を歩き始めて数分経った辺り。そこには若い女性向けの雑貨店があった。
「私、あんまり人とつるまなかったから、男子とばっかり居て。それでメンクイだなんて噂されて。いつもココに来てたの」
店内のキャアキャアとした煩い声に混じり、京香の声がなんとか葵に届く。
「けど今は、こうして好きな人と、好きな事が出来てるし。凄い嬉しいよ」
葵は胸が痺れた。やはり一ヶ月経とうが、何年経とうが、この不意な笑顔に慣れる事はないだろうなぁと、心に浮かべていた。




