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Crescent Ark Online  作者: 霧島栞
第三章・下[試練]
42/50

エピローグ1[ルカルディア]

 こつ……こつ……と、力ない足音が第一の聖櫃に響いていた。


 足取りは引きずるように、重い。


 けれども聞かなければならないことがあった。


 そして辿り着いた最奥。


「悠姫様……」


 小さな肩をさらに落として、名前を呼ぶフィーネに、悠姫は喉元まで出かかっていた憤りをぐっと堪える。けれども、


「フィーネ……」


 飲み込み切れなかった言葉が、絞り出されるように、壊れた聖櫃のフロアへと響いた。


「……この世界は、何なの?」


 ――あと後、悠姫とリーンはいきなりいなくなった二人を心配する面々の前に戻され、インターフェイスも元に戻り、身体の傷も嘘のように消えていた。


 すぐにでも第一の聖櫃に行きたかったが、これだけ人を集めておいては抜けることは出来なかったので[レーヴァグランホエール]へ挑戦したはいいものの、やはりボロボロに負けて、皆で温泉街に戻って来たのが数十分前の出来事。


 リーンも一緒について来たいと言っていたが、あまりに憔悴した様子だったこともあって、必ず報告することを条件に、リーンだけは先にログアウトしてもらった。


 本音を言うならば、悠姫もログアウトしたいくらい疲労が限界だったが、どうしてもあの場所について、フィーネに聞かなければならなかった。


「[第十二の聖櫃(エンカード=レグルス)]はルカルディアを奪われたって言って、[第十一の聖櫃(ウィニード=ストラトステラ)]は、願わくば、君が再びこの扉を開かんことを、って言ってた。それに[第三の聖櫃(トリアステル=ルイン)]の影だって……フィーネ、他の神々は、この世界を捨てたんじゃないの?」


「ウィニー……ルイン……そして、レグルス……」


 懐かしい名前を聞いて、フィーネはトリアステル=ルイン。ウィーニード=ストラトステラ。懐かしき彼ら彼女らの名前を寂しそうに呟いた。


 しかし、エンカード=レグルスだけは、何か違ったニュアンスが含まれていたように、悠姫は感じた。


「悠姫様。真実を知っても、わたしの騎士でいていただけますか……?」


 そう言って、見つめるフィーネの手は震えていて、悠姫はその手を取り、頷く。


「わたしは何があっても、フィーネの味方だから」


 答えは最初から決まっている。


「ありがとうございます……悠姫様」


 そして、フィーネは語り始める。


 壊れたオルゴールの音色が響く[第一の聖櫃]の心臓部で、


「――この世界[ルカルディア]は、本当の[ルカルディア]ではないのです」


 壊れた世界の歴史を。

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